(見出しの「元」を「人民元」に修正して再送します)
[上海 6日 ロイター] - 中国企業の間では、人民元が今後値下がりする事態を見越して輸出代金をドルのまま保持したり、積極的にヘッジ取引を活用したりする動きが出ている。ロイターが分析したデータや企業幹部、銀行関係者への取材で、こうした実態が浮かび上がってきた。
中国の複数の銀行関係者はロイターに、顧客が輸出代金を人民元に交換するのを渋っていると明かした。また証券取引所への届出書類に基づくと、本土A株上場の30社余りが今年これまでにリスクヘッジのため為替デリバティブを利用しているもようだ。
人民銀行(中央銀行)のデータからは、昨年を通じて減少していた国内商業銀行のドル預金が1月に340億ドル増えて8878億ドルに膨らんだことも分かった。
こうした現象は、各銀行が今年の人民元上昇を予想し、外国為替市場で今年はドル安になるとの見方が広がっている流れとは矛盾する。ただこの先、人民元の下落をもたらす可能性がある要素だ。
上海を拠点とする電子部品輸出企業の経営者ジューさんは、年間で約700万ドルという会社のドル収入をいかに管理するかが収益面で重要になると考え、今のところドル資金を取り置いていると話した。「一部は国内のサプライヤーへの支払い向けに人民元に転換する必要があるのかもしれない。(しかし)元はさらに下落するだろうから、ある程度ドルとして持っているべきだと感じている」という。
人民元の乱高下に備える企業も多い。その1つの中国南方航空は2月28日の証券取引所への届出書類で、今年は為替ヘッジ規模を最大40億ドル相当と、昨年の8億5000万ドル相当から大幅に拡大する計画を示した。
中国政府が昨年12月、新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込めるゼロコロナ政策を突然解除して以降、人民元の動きが不安定化している様子から考えれば、こうした企業の対応も不思議ではない。人民元は1月に半年ぶりの高値を記録した後、節目として注目される1ドル=7元目前まで元安方向に振れている。直近の水準は6.9085元。
人民銀行は、1ドル=7元よりも元安が進む事態について質問したところ、このレベルは「心理的バリア」とは言えないという易綱総裁の以前の発言を参照するよう回答してきた。
易氏は「過去5年間の人民元の変動率はおよそ4%で、主要国とほぼ変わらない」と主張。人民元レートは引き続き基本的に妥当な水準で安定推移するとの見通しを示している。
<介入は想定されず>
昨年の人民元は、米金利が上昇した一方で中国の金利が下がった影響もあり、対ドル下落率が8%弱と1994年の外国為替市場と為替レートの統合以降で最悪の値動きになった。
そして現在、中国人が海外旅行で外貨を使うと見込まれ、米金利が一段と上がる恐れが新たに出てきた上に、地政学的緊張から外国人が中国投資を敬遠し続けている。これらの材料は、いずれも人民元の下押し圧力となる。
コメルツ銀行のシニア中国エコノミスト、トミー・ウー氏は「米中両国の地政学的緊張の高まりを踏まえると、近いうちに1ドル=7元を超えて元安が進行する可能性はある」とみている。
もっともウー氏は、今後の経済データが中国経済の持続的改善を提示するようなら、人民元相場はある程度安定してもおかしくないとも指摘した。
中国当局はかつて、人民元を支えるための介入に動いている。また既に人民元安に賭ける取引のコストも割高化してきた。それでも市場では、当局の早期介入は想定されていない。
スタンダード・チャータード銀行の中国戦略責任者ベッキー・リュー氏は「これまでの当局の反応は微温的で、昨年以降に人民元のボラティリティーに対する許容度は格段に高まっている」と説明した。
バークレイズのFXストラテジスト、レモン・チャン氏は、人民元の名目実行為替レートの1つであるCFETS指数に言及し、同指数が100近辺で堅調を維持しているので、人民銀行は1ドル=7元のラインを死守しないだろうと予想した。
CFETS指数は年初来で約2%上昇している。
チャン氏の見立てでは、人民元は6月末まで7元にとどまり、その後年末にかけて6.7元まで強含みとなるという。
(Winni Zhou記者、Brenda Goh記者)