[東京 11日 ロイター] - 日産自動車とホンダの2024年3月期は、半導体不足による影響緩和を背景に販売増加や値上げ効果で営業利益が押し上げられる見通し。日産は前年比37.9%増の5200億円、ホンダ(国際会計基準)は同19.1%増の1兆円と過去最高を見込む。ただ、競争が激化する中国販売の先行き不透明感は強い。
<日産の中国事業「改革必要」>
日産の今期営業利益予想(5200億円)は、IBESがまとめたアナリスト19人の予想平均(3962億円)を上回る。
前提為替レートは1ドル=130円(前期は136円)、1ユーロ=135円(同141円)と円高方向に設定した。
営業利益予想は、為替影響が前期実績に対し850億円の減益要因となるが、販売増加や値上げで4500億円押し上げる。
今期の世界生産は410万台、世界販売は400万台といずれも21%増を計画する。
内田誠社長は会見で、半導体供給不足は続いているが、「状況は確実に改善してきている」と述べた。一方、「中国での生産と販売を、その他の市場でカバーし切れなくなっている」と説明。中国事業の業績貢献度が下がり、今期の営業利益率(4.2%)は事業構造改革で掲げた目標(5%)に届かない見通しと述べた。今秋には新たな中期経営計画を公表する考えも示した。
中国では、ガソリン車から電気自動車(EV)を中心とした新エネルギー車(NEV)への移行が加速。米EV専業のテスラのほか、中国勢のEV販売が伸びており、値引き合戦が過熱している。日産の前期の中国販売は24.3%減ったが、今期は8.1%増の113万台を目指す。
内田社長は、足元の中国販売は「厳しい状況。危機意識はある」と指摘。「中国市場の変化のスピードは想定をはるかに上回っている」といい、事業を継続・成長させるには今までの手法から脱却し、「機動性ある事業構造に転換していく必要がある」と語った。現地の合弁パートナーと対策を協議中で、既存資産を最大活用して「スピード感をもって改革に取り組む」とした。
一方、主力EV「リーフ」が米国で税額控除を受けられるインフレ抑制法(IRA)の対象外となったことについて、アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は会見で、リーフは設計開発時にIRAの要件を織り込んでいなかったが、今後投入するEV4車種は車台、電動パワートレーン、電池を米国で生産し、車両も現地で組み立てるため対象になるよう目指すと話した。
<ホンダは過去最高益、初の1兆円予想>
ホンダの今期の連結営業利益予想の1兆円は、IBESがまとめたアナリスト21人の予測平均値(9856億円)を上回っている。
今期の前提為替レートは1ドル=125円(前期は136円)に円高方向に設定した。世界四輪販売は18%増の435万台を計画する。北米を中心に販売増加を見込む。
営業利益予想は、為替影響が前期実績に対し2680億円の減益要因となる一方、販売増加などで4406億円、値上げなどで2650億円それぞれ押し上げる。
青山真二副社長は会見で、半導体不足の影響は「上期から下期に徐々に改善していく」との見立てで販売計画を策定したと説明し、「完全な正常化は24年度(来期)以降」との見通しを示した。価格戦略は「商品価値に見合った値上げを引き続き検討していく」と述べた。
中国市場に関しては「先行きは不透明」と指摘。今期はNEVが新車全体の3分の1を占めるといわれ、徐々にその比率が高まってきており、ホンダとしては一定程度の販売奨励金(インセンティブ)を使い、前期を上回る140万台を売りたいと語った。前期の中国販売は18.7%減の124万台だった。