Lananh Nguyen Saeed Azhar
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 米金融大手ゴールドマン・サックス経営陣が花形のトレーダーやディールメーカーに支給する今年の賞与増額を検討していることが関係筋5人の話で明らかになった。昨年の支給額を巡る一部からの不満をなだめ、人材をつなぎ留める狙いという。
関係筋のうちの3人の話では、増額の対象になるのはゴールドマンの収益の約68%を占めるトレーディングや投資銀行部門の人員。こうした部門の有能なトレーダーらの間では、昨年の業績不振の要因がリテール事業での損失なのに、自分たちの賞与が減ったとの不満が出ていた。
昨年の同社純利益は前期比48%減。賞与の落ち込みは、別の情報筋によると最大で40%減ときつかった。ウォール街平均の賞与減少率は26%。
別の情報筋は、デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)ら経営首脳陣は報酬に関する議論を始めたばかりだと明らかにした。
ただ、ソロモン氏らは同社最高の職位である「パートナー」の小規模グループと会合を持ち、資産運用事業を引き続き成長させる一方で、花形トレーダーらの報酬懸念を払拭する狙いも含め、収益の柱である世界的規模の投資銀行業務と市場部門に再注力する経営戦略を話し合ったという。
同社は10日、「報酬サイクル絡みの時期尚早の憶測についてコメントする気はない」との声明を公表した。ただ情報筋の一人は、花形トレーダーらがゴールドマンよりも高い報酬を提示されてプライベートエクイティ(PE)やヘッジファンドに引き抜かれるのを防ぐため、より高い報酬が提示されていると話した。
過去数カ月間、ゴールドマンでは著名なパートナー数人が退職した。この中には投資会社シックスストリートに移籍するジュリアン・ソールズベリー氏や、マーチャント・バンキングを手がけるBDT&MSDパートナーズに移ったディナ・パウエル・マコーミック氏らがいる。マコーミック氏はゴールドマンではソブリン債事業を統括していた。
ゴールドマンの報酬が増加するという可能性は、業界全体では減る方向にあるのとは対照的だ。ニューヨーク州会計監査官トーマス・ディナポリ氏によると、企業が今年の賞与向けに確保する原資は利益とともに縮小し、企業によって落ち込み方が大きく異なる見通し。
同氏の報告書に基づくと、ニューヨーク証券業界の賞与平均額は2020、21年に連続して過去最高を更新したものの、22年は前年比26%減の17万6700ドルにとどまっていた。
今年の見通しでは、人材コンサルタント事業などを手がけるエグゼクティブ・サーチ企業シェフィールド・ハワースが初期段階の予想を出している。米投資銀行のマネジングディレクターの平均報酬は、企業合併・買収(M&A)などの活動低下と収益の減少により、前年を10―15%割り込む見通しという。