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焦点:テスラのサイバートラック、新型電池の量産難航で本格展開に暗雲

発行済 2023-12-27 14:30
更新済 2023-12-27 14:46
© Reuters.  12月21日、米電気自動車(EV)大手テスラが先月に出荷を開始した電動ピックアップトラック「サイバートラック」は、最新型のリチウムイオン電池「4680」の生産増強が計画

Norihiko Shirouzu Paul Lienert

[オースティン(米テキサス州) 21日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラが先月に出荷を開始した電動ピックアップトラック「サイバートラック」は、最新型のリチウムイオン電池「4680」の生産増強が計画通りに進まない恐れがあり、本格展開に暗雲が垂れ込めている。事情に詳しい関係者9人の話で明らかになった。

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は今年10月、サイバートラックの年間生産台数が2025年中に25万台に達するとの見通しを示した。

だが、生産台数を予定通りに増やしていくにはかなりの困難が予想される。主な問題の一つは、最新の電極のドライコーティング技術を採用した4680電池の生産ペースにある。

ロイターが公開情報と独自に入手した非公開データから推計したところ、テキサス州オースティンにあるテスラの「ギガテキサス」工場では現在、年間約2万4000台に搭載する分の4680電池しか生産できていない。これは年間に25万台のサイバートラックを生産するために必要な能力の約1割にとどまることを意味する。

テスラが2020年に打ち出した計画では、ドライコーティング技術を使った電極による電池の大量生産が重要な前提条件となっていた。計画には水分を使わずに電極を塗工することで電池の製造コストを半分未満に抑えるとともに、投資を大幅に削減し、より小さく、環境に配慮した工場を建設する方針が盛り込まれていた。

9人の関係者は、テスラは、生産目標の達成に必要なペースで4680電池を製造するために必要なドライコーティングの大量処理のノウハウをまだ構築できていないと話した。

バッテリー技術コンサルタントのユアン・ガオ氏によると、ドライコーティング技術によるアノード電極とカソード電極の製造は実験室では立証されており、比較的小さなエネルギー貯蔵装置や一部の小型バッテリーでも実績がある。

同氏は「だが、大量かつ十分に速いペースで大型のEV用バッテリーを製造することについては、これまでに誰もやったことがない。この商用化を試みるのはテスラが初めてだ」と指摘。「テスラにとっての試練は、生産規模を拡大して処理速度を速めるだけではなく、独自の機器とツールを開発しなければならないことにある」と語った。

テスラにこの件について詳細な質問をしたが、返答はなかった。

<難問解決>

関係者のうち3人の話では、サイバートラックに搭載される4680電池には1360個のセルが組み込まれていると推計されている。

これに基づくと、年間25万台のサイバートラックを供給するには年間3億4000万個、1日当たりでは約100万個のセルを製造する必要がある。

テスラがこれまでに公開した情報に基づいてロイターが試算したところ、テスラのオースティン工場では現在、1000万個の4680用セルを製造するのに約16週間を要している。この試算は、関係者3人が確認した。

この製造ペースでは年間のセル生産は3250万個となり、サイバートラック2万4000台分にとどまる。

テスラはまた、4680電池を他の車種にも搭載する方針であり、2020年代半ばまでに発売する価格が2万5000ドル程度の小型車への搭載も検討されている。

テスラはカリフォルニア州フリーモントの工場でも4680を限定的に生産する能力があるが、同工場は試作品の生産が中心だ。テスラに長期にわたって電池を供給してきたパナソニックは米国内に少なくとも2つの工場を建設する計画だが、まだ1カ所目に着工したばかりだ。

また、米国の新工場でテスラ用の4680電池を生産するかどうかは同社は発表しておらず、初期的には日本国内で4680の量産を立ち上げる計画だとしている。

関係者のうち2人は、1本の生産ラインで製造ノウハウを確立して安定的に生産できるようになれば、テスラによる4680電池の生産拡大は加速すると考えている。

同じ関係者2人は、テスラは支障なくバッテリーを生産するノウハウの確立に重点的に取り組んできたと指摘。その1人は「いったん難題を解決すれば、安定的に生産できるようになり、生産量は飛躍的に増える」と話した。

テスラの技術担当シニアバイスプレジデント、ドリュー・バグリーノ氏は今年10月、同社はオースティン工場の2本の生産ラインで4680用セルを製造しており、合計で8本の生産ラインを2つのフェーズに分けて設置する計画だと明らかにした。最後の4本は2024年終盤に稼働する予定。

ただ関係者の1人は、1本の生産ラインで確立したノウハウを次の生産ラインに応用することは容易ではないと指摘。収益を生み出せる生産ラインでは、廃棄されるセルは全体の5%程度にとどまるが、新たな生産ラインが稼働する際、廃棄率は30-50%に跳ね上がり、数カ月にわたってその状態が続く可能性があると話した。

関係者の1人は、テスラのドライコーティング技術によるカソードは、旧式のウェットコーティング手法よりも生産ペースが速いノウハウが確立されていないと指摘。ただ廃棄率は10―20%に低下しているという。

バグリーノ氏はこの件に関するコメント要請に返答していない。

<どろどろの塊>

この関係者によると、テスラはリチウムとマンガン、ニッケルなどの材料をバインダー(接合材)と混ぜ合わせて金属箔に付着させ、水分を使わずにカソードを製造する工程で壁にぶつかっている。

関係者のうち2人によると、小規模なパウダー生産では問題は発生しなかったが、テスラが規模の拡大を試みたところ、大量の熱が発生して接合材が溶けてしまったという。関係者の1人は、テスラは接合材としてポリテトラフルオロエチレン(テフロン)を使用しているとみている。

「接合材が溶ければ、やがて全部がどろどろの塊になる」と、上記の関係者は説明した。

同様に問題となっているのは、金属箔を塗工して電池の電極を生産するための、巨大なローラーが付いた輪転機のような機械だ。

テスラはセルの生産を加速するため、複数の金属箔に高速で同時に電池材料を塗工しようとしている。

これには、巨大な幅広ローラーを使って高圧で材料を金属箔に付着させる必要がある。だがローラーが巨大で幅広になると、圧力を均等にかけるのが困難になることが判明したと、複数の関係者は話す。

圧力が均等に加わらないと、電極の表面に凹凸ができたり厚さが均一ではなくなり、電池セルの電極として使い物にならいため廃棄せざるを得なくなるという。

さらなる問題点も指摘されている。テスラのバグリーノ氏は3月に開催された電池カンファレンスで、塗工に欠陥があるセルを排除できるようにするための新しい品質評価システムをいまだ構築中だと話した。

事情に詳しい関係者の1人によると、これにはテスラの電池開発と製造、そして実際の使用をカバーするデータインフラを構築する必要がある。塗工の欠陥は、使用開始から数カ月後に現れる場合もあるためだ。

この関係者は、テスラはいまだにどのドライ電極が優良で、どれが不適合品かを完璧に見分ける術を持っていない、と指摘した。

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