[日本インタビュ新聞社] - クリナップ<7955>(東証プライム)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームや洗面化粧台も展開している。重点施策として既存事業の需要開拓と低収益からの転換、新規事業による新たな顧客の創造、ESG/SDGs視点での経営基盤強化を掲げている。24年3月期は期初計画を下回るものの、プロモーション強化による拡販や原価低減を推進して営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は23年12月の直近安値圏から切り返して戻り歩調だ。週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を回復した。そして23年5月の昨年来高値に接近してきた。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。23年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門が81%、浴槽・洗面部門が12%、その他が7%だった。システムキッチンの大手で、同社資料によるとシステムキッチンの市場シェアは20年3月期が17.5%、21年3月期が18.5%、22年3月期が19.8だった。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。
中高級品に強みを持ち、厨房部門は最高級ステンレスキッチンCENTRO(セントロ)、中高級価格帯のステンレスキャビネットキッチンSTEDIA(ステディア)、システムキッチンrakuera(ラクエラ)、コンパクトキッチンcolty(コルティ)、浴槽・洗面部門はバスルームAQULIA-BATH(アクリアバス)、yuasis(ユアシス)、洗面化粧台TIARIS(ティアリス)などを主力製品としている。
最高級システムキッチンCENTROについては、23年2月にモデルチェンジを発表し、23年6月に受注開始した。なお、システムキッチンCENTROのモデルチェンジでラインナップに追加した新作ワークトップ「バイブレーションダーク」が23年度のグッドデザイン賞を受賞し、審査員一人ひとりが特に注目した1品を選ぶ「私の選んだ一品」にも選出された。
競争力強化に向けてショールーム戦略も強化している。20年6月にはKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。22年9月には川越ショールームをリニューアルオープン、22年10月には津ショールームをリニューアルオープン、22年11月には京都ショールームを移転オープン、22年12月には山形ショールームを移転オープン、23年11月には長崎ショールームを移転オープンした。
販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店(22年9月末時点で約4000社)を主力としている。22年3月期の販売ルート別売上構成比(単体ベース)は一般ルート(工務店・リフォーム)が78%、ハウスメーカーが16%、直需(マンション)が6%だった。なお22年10月にはタイ向けシステムキッチンの現地生産を開始した。
物流面では、首都圏での物流強化の一環として、23年12月に相模原プラットフォームをリニューアル(23年12月竣工、24年4月本格稼働予定)した。
■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」
長期ビジョンの「クリナップサステナブルビジョン2030」(CSV30)では、2030年度の目標として財務目標(連結)では売上高1500億円、営業利益95億円、ROE8.5%、非財務目標では2013年度比温室効果ガス50%削減、女性管理職比率15%、男性育児休暇取得率100%、有給休暇取得率60%を掲げている。
既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。
なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。そして23年7月には、クリナップ財団の23年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、11年間で累計奨学生460名となった。
23年2月には、CSV30の実現に向けて「未来キッチンプロジェクト」を始動した。武蔵野美術大学との産学共同で社会課題へ取り組む「未来キッチンラボ」の創設、過去に販売した「キッチンキャビリサイクルプログラム」の開始、未来を担う子供達からアイデアを公募する「未来キッチン イラストコンテスト」の開始、という3つのアクションを通じて、2030年までにシステムキッチンの枠を超えた新しいキッチンの事業化、より心豊かな食文化の創造を目指す方針としている。また「未来キッチンプロジェクト」の一環として、会員制リフォームネットワーク「水回り工房」にて、23年4月より「キッチンキャビリサイクルプログラム」を開始した。資源の有効活用を推進する。
23年9月には同社ホームページ上に「サステナビリティレポート2023」を公開した。CSV30実現に向けた取り組みの進捗をはじめ、CSR方針を見直して新たに策定した「サステナビリティ方針」や、23年に策定した「クリナップグループ環境ビジョン2050」および「クリナップグループ人権方針」も掲載した。
23年12月には、グループの2030年度温室効果ガス削減目標においてSBT(Science Based Targets)イニシアチブからの認定を取得した。
■24年3月期営業・経常増益予想
24年3月期の連結業績予想(23年10月31日付で下方修正)については、売上高が23年3月期比3.8%増の1287億円、営業利益が2.8%増の31億円、経常利益が1.1%増の36億円、親会社株主帰属当期純利益が8.9%減の23億円としている。配当予想(11月7日付で期末5円上方修正、創業75周年記念配当5円を実施)については、23年3月期比5円増配の31円(第2四半期末13円、期末18円=普通配当26円+創業75周年記念配当5円)としている。予想配当性向は49.7%となる。
部門別売上高の計画は、厨房部門が5.2%増の1060億43百万円、浴槽・洗面部門が0.3%減の152億04百万円、その他が6.2%減の74億53百万円としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比3.6%増の635億35百万円、営業利益が40.4%減の10億47百万円、経常利益が34.6%減の13億29百万円、親会社株主帰属四半期純利益が43.4%減の7億55百万円だった。
期初予想(売上高640億円、営業利益15億円、経常利益18億円、親会社株主帰属四半期純利益11億円)を下回り大幅減益だった。新設住宅着工戸数や水まわりリフォーム市場の伸び悩みなどで売上高が想定を下回り、原材料・資材価格高騰、広告宣伝費・人件費増加なども影響した。なお部門別の売上高は厨房部門が6.0%増の519億82百万円、浴槽・洗面部門が3.7%減の77億96百万円、その他が9.8%減の37億57百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高318億82百万円で営業利益4億83百万円、第2四半期は売上高316億53百万円で営業利益5億64百万円だった。
通期は期初計画を下回るものの、プロモーション強化による拡販や原価低減を推進して営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は23年12月の直近安値圏から切り返して戻り歩調だ。週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を回復した。そして23年5月の昨年来高値に接近してきた。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。1月24日の終値は731円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS62円35銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の31円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1514円13銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約274億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)