[日本インタビュ新聞社] - ■中東危機で株式市場にフライング、楽観視に警鐘
株式市場は、つくづくフライング好きである。過日9月27日の自由民主党の総裁選挙では、「高市トレード」を先取りするフライングを犯し、石破茂候補の逆転勝利で日経平均株価が、1910円安と急反落し今年3番目の下落幅となる痛いしっぺ返しを受けたにもかかわらずだ。今回のフライングは、イランが、10月1日にイスラエルへミサイル攻撃を仕掛けた地政学リスクに関してである。
イランのイスラエルへのミサイル攻撃を受けて、日経平均株価は、2日に一時下げ幅を1000円超まで広げ843円安と急反落した。ところが、翌2日は、743円高と急反発し、取引時間中には1047円高と上げ幅を広げる場面があり、前日の急落幅を埋めてしまった。前週末も続伸して引けた。今回のイランの攻撃が、イスラエルの報復攻撃を呼び、紛争が、アラブ対イスラエルの中東全域での全面戦争にエスカレートする可能性も否定できないにもかかわらずである。
■地政学リスク軽視、日本経済への影響を過小評価
その後開いた米国市場では、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が、発表された9月の雇用統計が市場予想を上回った米国経済のソフトランディング期待から4日ぶりに史上最高値を更新したが、取引時間中にはやはり中東情勢の緊迫化を懸念して マイナスになる場面もあったと伝えられている。米国は、シェールオイルの開発で世界一の産油国に返り咲いており、「油の一滴は血の一滴」といわれた資源小国の日本とは地政学リスクの度合いが違うにもにもかかわらずである。
仮にイスラエルの報復攻撃が、石油関連施設に及び、イランがホルムズ海峡封鎖などの対抗措置を講ずれば、日本への影響は大きく、最悪ではそれこそ狂乱物価再来が想定され、「時間的な余裕はある」としている植田和男日銀総裁が、政策金利引き上げを迫られるケースさえ懸念される。またあと1カ月に迫った米国の大統領選挙の勝敗さえ左右するかもしれない。その地政学リスクをわずか1日で織り込んでしまうのは、いくら何でもフライング以外に考えられない。
イランのイスラエルへのミサイル攻撃は、今回が初めてではない。今年4月12日にもミサイル攻撃を仕掛け、イスラエルも報復攻撃をした。ただイランの攻撃は事前に予告され、イスラエルの報復攻撃も抑制的で両国とも全面戦争に悪化することを望んでいないとされた。しかし、日経平均株価の初期反応は翌週週明けの15日に290円安とショック安となったあと思いのほか苦戦した。また関連銘柄の個々の株価も、高値反応したものの一過性に終わり限定的にとどまった。
この4月と今回10月の株価感応度がどう違い、その違いは何によるのかははなはだ興味深い。あるいはこの違いを比較すると、「遠い戦争は買い」なのか、やはり「油の一滴は血の一滴」なのか今後の「売り、買い、休み」の投資判断や投資銘柄選択のヒントが浮上するかもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)