[日本インタビュ新聞社] - 建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタントの大手である。成長戦略として、グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指すとともに、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現にも取り組んでいる。10月29日には広建コンサルタンツを子会社化すると発表した。24年12月期(8月13日付で上方修正)は前回予想に比べて減益幅が縮小する見込みとしている。国土強靭化関連など事業環境は良好であり、通期会社予想に再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■総合建設コンサルタント大手
総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持ち、24年5月には湯浅コンサルティング(京都市)を子会社化した。また10月29日には広建コンサルタンツ(広島県福山市)を子会社化(株式譲渡実行日11月12日予定)すると発表した。地方自治体市場への展開を強化する。海外は、建設技研インターナショナルが東南アジア、英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)が英国を中心に展開している。
23年12月期のセグメント別の業績は、国内建設コンサルティング事業の受注高が22年12月期比6.8%増の621億61百万円、売上高が10.9%増の644億73百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が29.9%増の89億43百万円、海外建設コンサルタント事業の受注高が9.4%増の303億12百万円、売上高が12.9%増の285億83百万円、利益が5.2%減の10億73百万円だった。
■グローバルインフラソリューショングループ目指す
グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。
中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024(発注単価上昇と生産性向上によって利益率が改善しているため23年2月14日付で営業利益および営業利益率の目標値を上方修正)では、経営目標値として24年12月期の連結ベース受注高850億円、売上高850億円、営業利益77億円(従来は68億円)、営業利益率9.1%(同8.0%)、ROE10%以上、建設技術研究所単体ベースの受注高550億円、売上高550億円、営業利益64億円(同55億円)、営業利益率11.6%(同10%)、社員数2300人を掲げている。
CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。
22年12月には、22年6月に策定した「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」の宣言内容の実現に向けて、具体的な推進計画を策定・公表した。23年1月にはサステナブル事業会社CTIアセンドを設立し、福島県相馬市で子実トウモロコシ栽培・ウイスキー製造販売に取り組むと発表した。なおCTIアセンドは24年6月にウイスキーの製造免許を取得し、7月から製造を開始した。23年7月にはリスクマネジメントを強化するため、リスクマネジメント基本方針を策定し、リスクマネジメント体制を構築した。23年12月にはパートナーシップ構築宣言およびマルチステークホルダー方針を公表した。
24年1月には企業活動を通じて次世代育成に貢献するため、次世代法に基づいた一般事業主行動計画(行動計画期間24年1月1日~25年12月31日)を策定・公表した。男性の育児目的休暇取得率100%、育児・介護と仕事の両立支援に向けた管理職啓発や職場環境改善、子供や家族に社員の職場理解を促進する活動などを推進する。
24年10月には25年12月期の研究開発投資の基本方針を公表した。事業展開の加速や持続可能な社会の構築を目的に総額を15億円(24年12月期予算から2億円増額)とした。このうち社会のサステナビリティを実現するための投資(グリーン関連研究揮発)の予算を4億円とした。
■資本コストや株価を意識した経営について
24年3月に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた方針・取り組みをリリースした。株主資本コストを7%前後と認識(市場リスクプレミアムを6~7%程度としてCAPM法により推定)し、中期経営計画2024ではROE目標を10%以上としている。そして2023年12月期のROEは14.7%となり、株主資本コストとROE目標を超過する水準を維持している。
株価指標については、PBRは概ね1倍台前半で推移しているものの、PERについては東証プライム上場企業の平均より低く評価されている。このためPBRとPERの向上に向けた取り組みとして、中長期成長戦略の推進による利益成長の実現、成長投資との適切なバランスを取った株主還元の充実、IR・SRの強化により企業価値の向上を目指す方針としている。なお株主還元について、中長期的には連結配当性向30%程度以上を目安とした利益還元を目指すとしている。
■新分野・新事業への展開を加速
22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。
23年6月には、沖縄県伊平屋島において次世代交通システム「空飛ぶクルマ」試験飛行を実施・成功した。23年8月には、AirXおよび一般社団法人MASCと連携し、兵庫県の「空飛ぶクルマ実装促進事業」および神戸市の「神戸市空飛ぶクルマ社会実装促進事業」に採択された。電動、自律飛行、垂直離着陸の特徴を備えた新たなモビリティである「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた環境整備に資する実証を行う。
24年4月にはAIを用いて発電量および電力消費量予測を行う予測制御型エネルギーマネジメントシステムの開発を発表した。24年7月には道路構造物ナレッジシステム(画像・文字情報に基づく類似事例検索Aツール)の開発を発表した。24年10月には粘り強い河川堤防強化技術「改良型被覆ブロック等を用いた表面被覆型の堤防強化技術」の開発を発表した。
■24年12月期減益予想だが再上振れ余地
24年12月期の連結業績予想(8月13日付で上方修正)については、売上高が23年12月期比4.2%増の970億円、営業利益が4.1%減の96億円、経常利益が4.5%減の97億円、親会社株主帰属当期純利益が8.4%減の69億円としている。配当予想は23年12月期と同額の150円(期末一括)としている。予想配当性向は30.2%となる。
前回予想(3月26日付公表値、売上高890億円、営業利益84億円、経常利益85億円、親会社株主帰属当期純利益61億円)に対して、売上高を80億円、営業利益を12億円、経常利益を12億円、親会社株主帰属当期純利益を8億円それぞれ上方修正し、売上高は減収予想から一転して増収予想、各利益は減益幅が縮小する見込みとした。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比6.6%増の507億46百万円、営業利益が5.3%減の67億89百万円、経常利益が6.0%減の68億53百万円、親会社株主帰属四半期純利益が7.7%減の48億83百万円だった。小幅減益だが売上面は順調だった。なおグループ全体の受注高は7.4%減の545億45百万円だった。
国内建設コンサルティング事業は受注高が6.2%減の381億23百万円、売上高が4.0%増の354億93百万円、営業利益が4.5%減の64億94百万円、海外建設コンサルティング事業は受注高が10.3%減の164億21百万円、売上高が12.9%増の152億53百万円、営業利益が21.4%減の2億96百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が291億89百万円で営業利益が61億07百万円、第2四半期は売上高が215億57百万円で営業利益が6億82百万円だった。公共事業が中心のため年度末にあたる第1四半期偏重の収益特性があるが、当期の第1四半期は高収益かつ大型案件が想定以上に進捗したことも寄与した。
修正後のセグメント別計画は、国内建設コンサルティング事業の受注高が625億円、売上高が660億円、営業利益が87億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が315億円、売上高が310億円、営業利益が9億円としている。国土強靭化関連など事業環境は良好であり、通期会社予想に再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。10月29日の終値は4535円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS497円30銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の150円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3958円89銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約642億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)