紀文食品 Research Memo(5):ROICを向上し稼ぐ力を強化する

発行済 2025-01-10 15:05
更新済 2025-01-10 15:15
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*15:05JST 紀文食品 Research Memo(5):ROICを向上し稼ぐ力を強化する ■紀文食品 (TYO:2933)の中期経営計画

4. 資本効率の改善
稼ぐ力を強化するため、収益性を改善し、資本効率を向上する方針である。
その指標となるROICについて、分子側は、既存事業と新規事業で売上高を拡大、グループ内の機能再編やサプライチェーンの最適化により原材料調達コストを低減、製品やサービス構成の最適化やDXによる業務効率化により生産性を向上させる。
分母側も、自己資本比率を向上させるとともに、棚卸資産や固定資産、借入金の圧縮によって財務体質を強化する。
これにより、ROICを現在の8.1%から10.0%以上へ2ポイントほど改善する考えである。
また、この結果として、中期経営計画期間中に営業キャッシュ・フロー155億円を稼ぎ出し、生産能力増強や新製品開発など成長投資に75億円、供給機能再編投資に50億円、株主還元に15億円、借入金圧縮に15億円を配分する。
なお、チャンスがあれば、事業の幅を広げたり新規事業を取り込んだりすることを目的に、M&Aを実施することも想定しているようだ。



経営基盤を整備し、企業価値の向上につなげる

5. 経営基盤の整備
経営基盤の整備では、顧客、社員、取引先、自然や環境、そして同社自身のために、グループミッションである「世の中を“すこやかなおいしさ”で満たしつづける。
」持続可能な社会の実現を目指し、サステナビリティ経営を推進する方針である。
これまでもCO2排出量やプラスチック使用量の削減などの実績があるが、さらに経営の礎となるコーポレート・ガバナンスや研究開発、人的資本、安全・安心への強化に取り組み、成長を持続できる企業体質へと変革していく考えである。
特に人的資本の充実は成長に不可欠なため、教育を充実し、挑戦意欲の高い活力のある社員を育成する方針である。
また、こうした取り組みや様々な戦略の推進を通じて資本コストや株価を意識した経営も実現し、企業価値の向上につなげていく考えである。




■業績動向

前年同期と比べ利益進捗率が高く、大幅増益を達成

1. 2025年3月期中間期の業績概要
2025年3月期中間期の業績は、売上高47,759百万円(前年同期比0.8%増)、営業利益546百万円(同405.4%増)、経常利益440百万円(前年同期は69百万円の損失)、親会社株主に帰属する中間純損失55百万円(前年同期は658百万円の損失)となった。
なお、在外子会社等の収益及び費用の為替換算方法に関して、決算日の直物為替相場による円貨換算から期中平均為替相場による円貨換算に変更した。
この結果、遡及適用を行う前と比べ、2024年3月期中間期の売上高が327百万円の減少、営業利益が62百万円の増加、経常利益が23百万円の減少、親会社株主に帰属する中間純利益が18百万円の減少となっている。


日本経済は穏やかな回復基調を維持する一方、様々なモノの値上りによる節約志向に伴い、個人消費は依然として力強さを欠き、先行き不透明な状況が続いている。
こうした環境下、同社は、2024年春に策定した中期経営計画にしたがって「持続的に成長できる強固な企業体質の構築」を目指し、既存事業の確実な成長と事業領域の拡大による成長を図るとともに、成長を担保するための資本効率の改善と経営基盤の整備に取り組んだ。
この結果、売上面では、国内食品事業の苦戦を、他の事業の好調や新規の取り組みで補完するなど総合力を発揮し、増収を確保した。
利益面では、製造労務費などの増加はあったものの、すり身や鶏卵など原材料価格の安定、国内商事販売の減少と海外売上の増加による事業ミックスの良化、カニカマなど好採算の自社製品の比率上昇により売上総利益率が大きく改善し、前年同期の原材料価格高騰の影響から平常時のベースに戻った印象である。
このため、昇給などによる人件費増、物流拠点拡大による賃料増、旅費交通費や広告宣伝費など活動費の増加を背景に売上高を上回って伸びた販管費をカバーし、大幅な営業増益につながった。
進捗率については、売上高は国内の猛暑や海外の景気減速感により43.0%と前年同期よりやや低かったが、営業利益は原材料価格の安定により11.6%と高くなった。
なお、冬季に主力の水産練り製品や惣菜がおでんや鍋物向けに需要が高まり、また12月におせち料理関連商品の売上が集中するなど、同社には売上高と利益が第3四半期に偏重する季節性がある。



国内食品事業の苦戦を海外食品事業と食品関連事業でカバー

2. セグメント別の業績動向
セグメント別では、国内食品事業の売上高は32,170百万円(前年同期比1.6%減)、セグメント損失は289百万円(前年同期は502百万円の損失)。
海外食品事業の売上高は5,771百万円(前年同期比1.9%増)、セグメント利益は489百万円(同87.6%増)。
食品関連事業の売上高は9,817百万円(同8.9%増)、セグメント利益は309百万円(同20.9%増)となった。
国内食品事業の利益は大きく改善したものの、季節性から損失を継続、海外食品事業と食品関連事業の利益でカバーした格好である。


国内食品事業の売上高は、健康志向や簡便性に対する認知度向上、調達の多様化による鶏卵供給の安定により、中華惣菜や玉子加工品を中心とした惣菜の販売が、前年同期比で堅調に増加した。
例年以上に長く続いた高気温に加え、価格や糖質オフなど多面的な競争が激化したことで、竹輪やさつま揚など主力の水産練り製品が前年同期比で微減、麺状製品は低調に推移、円安の影響を受けた輸入農畜水産品も苦戦した。
利益面では、損失継続とはなったが、原材料価格の安定、事業ミックスの改善、ロスの低減や機械化による生産効率の向上により大幅な増益となった。
海外食品事業の売上高は、インフレ進行や金利動向による景気減速感を背景に各国で小売業向けが減少、農産物輸出などで為替変動の影響や一部流通で価格対応の遅れが生じたが、戦略商品のカニカマを中心にチーちくやおでんセットなど水産練り製品が好調に推移した。
米国でハマチやアワビなどの水産品、中国では納豆などの日本食商材が順調に伸び、微増ながら増収を確保した。
利益面では、フレート代などコストが増加したが、自社製水産練り製品の販売増により利益率が上昇し、大幅な増益につながった。
食品関連事業の売上高は、主力の物流サービスで、新規受注や配送エリアの拡大、外食店向け共同配送などにより物量が順調に増加した。
全国にチルド製品を安全に配送する独特の業態を構築しているため新規の顧客獲得も確実に進み、近年に移転増強した名古屋センターに引き続き、今期拡張した関西センターも順調に物量を伸ばしているようだ。
情報サービスでは外販が貢献、生体認証システムの導入が進んで増収となった。
利益面では、人件費や運送費の増加に対して、料金改定や構内作業の機械化、配送効率の最適化などを実施したことで2ケタ増益となった。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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