米中貿易戦争の影響で、米国ファッション・ブランド企業は「チャイナシフトアウト(中国離脱)」に動いている。
米ブルームバーグ通信は20日、中国で事業を展開する外国企業が関税のないカンボジアなど東南アジアにシフトしていると報道した。
米国アパレル・フットウェア協会(AAFA)副社長スティーブ・ラマー氏は同通信とのインタビューで、関税リスクで企業に変化が起きていると主張、「企業側は生産拠点を確保するためにどのくらい迅速に対応できるか見極めている」と説明した。
東南アジアに生産拠点の移転を検討している米大手ブランド「スティーブ・マデン」のエドワード・ロズンフェルト社長は「今年のカンボジアで生産されたハンドバッグの割合は15%だが、来年は2倍にする」との計画を発表した。
同通信によると、同社は昨年、自社製品の93%を中国から供給した。
世界的に有名な米ファッションブランド「タペストリー(元コーチ)」も、ベトナムでの生産を増やし、中国産の割合は5%未満に減らすなど、同様の戦略をとっている。
米ハンドバッグメーカー「ベラ・ブラッドリー」は昨年12月、生産拠点を中国からカンボジア、ベトナムなどに移転する予定と述べた。
このような動きは、電子部品メーカーにも見られる。
アップル社に電力部品を供給している台湾のデルタ電子は先月、タイでの現地生産を拡大するために21億4000万ドル(約2300億円)で企業を買収する計画を明らかにした。
同通信は、グローバルなサプライチェーンを主導する台湾企業の多くが、中国に集中した生産拠点を東南アジアにシフトする兆候を見せていると報じた。
*労働力の豊富な東南アジア、「製造業の新ハブ」として注目
発展途上国の経済支援のため、米政府は世界121カ国の数千にのぼる輸出商品の関税を免除している。
カンボジアでは米国からのハンドバッグ、財布、旅行用バッグなどの製品が対象となっている。
同通信は、この措置のおかげで、多くのメーカーがカンボジアに生産能力投資を拡大するだろうとみている。
ベトナムはすでに豊富な労働力と法人税の減免などで、外国企業の投資が活発だ。
サムスン電子とインテルはすでに巨額を投じて工場を建設した。
ベトナム・ハノイにある米国商工会議所のアダム・スコープ専務は「比較的低いインフレと安定した為替と政治状況などが外国投資の誘致に役立つ」と強調した。
同通信は、「主に米やコーヒーなどの農産物を輸出していた東南アジア諸国が製造業のハブとして変貌を遂げている」と伝えた。
専門家らは中国の人件費が上がっている点も脱中国の動きを後押ししたと指摘する。
イギリス市場調査機関オックスフォード・エコノミクスによると、カンボジアの労働力コストは中国の4分の1に過ぎない。
米中貿易戦争が激化した場合、各国メーカーの生産拠点は大きく変わる見通し。
しかし、反対の意見もある。
生産性の問題と、すでに中国内に構築されたインフラの活用など、中国の利点を無視することができないためである。
香港貿易発展局によると、カンボジアの生産性は、中国の50〜60%の水準である。
スティーブ・ラマ氏は中国から抜け出すことは容易ではないと述べ、「安価な労働力が生産性に直結するわけではないから」と説明した。
(翻訳編集・齊潤)
【ニュース提供・大紀元】