■サカタインクス (T:4633)の中長期成長戦略
2. 「中期経営計画2020」で2020年12月期経常利益150億円目標
2017年11月に3ヶ年の「中期経営計画2020(2018年ー2020年)Innovation for the Future~未来に向けた革新~」を策定した。
基本方針「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」をビジネステーマとして、情報メディアの多様化、食の安心・安全意識の高まり、環境規制の強化を背景とした印刷市場の変化に柔軟に対応し、CSR(企業の社会的責任)活動の充実や環境経営の推進を図ることにより、企業体質・経営基盤の強化に取り組むとしている。
そしてコア事業である印刷インキ事業及び機能性材料事業の拡大、コア事業で培った技術の応用展開による新規事業の創出を推進する。
目標数値には2020年12月期の売上高195,000百万円、営業利益13,000百万円、経常利益15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9,800百万円、ROE10%以上を掲げている。
新規事業の数値は織り込んでいない。
前提為替レートは1米ドル=112円である。
印刷インキ事業の成長戦略は、コア施策として既存印刷市場領域における環境配慮型製品の開発・投入、生産性向上製品の拡販、地域密着型製品の拡販を推進する。
そして3ヶ年で先進国市場において10%成長、新興国市場において40%成長を目指す。
拡販戦略製品は、環境配慮型製品(水性フレキソインキ・グラビアインキ、ノントルエン・ノンVOCインキ、ハイソリッドインキなど)、植物由来成分含有製品(ボタニカルインキ、ライスインキなど)、生産性向上製品(高感度UVインキ、EB硬化型インキなど)、地域密着型製品(グラビアインキ、新聞・オフセットインキなど)としている。
機能性材料事業の成長戦略は、デジタル印刷材料分野では産業用インクジェットインキのグローバル展開、未参入市場(建材・壁装材、ホーム&テキスタイル、アパレルなど)への展開、画像表示材料分野では最先端スペックに合致したカラーフィルター用顔料分散液の開発、中国市場への積極展開、機能性コーティング剤の分野では新機能性材料の開発・市場投入を推進する。
さらに新規事業の創出では、住宅・建築、生活環境、エネルギー、オートモーティブ、エレクトロニクスなど、既存の印刷業界以外の分野をターゲットとして、機能性フィルム用材料のガスバリア性コーティング剤、ディスプレイ分野の無機材料分散液、センサー分野でタッチパネル用材料となる光学用透明絶縁材料、メディカル分野で臨床検査用材料となる検査ガラス用コーティング剤、さらに着色剤として新規色材となる加飾成型用着色材料分散体などの開発・事業化を推進する。
3. セグメント別目標と重点施策
セグメント別(連結調整前)の目標数値は、印刷インキ・機材(日本)が売上高59,900百万円で営業利益2,600百万円、印刷インキ(アジア)が売上高46,600百万円で営業利益3,900百万円、印刷インキ(北米)が売上高52,700百万円で営業利益2,500百万円、印刷インキ(欧州)が売上高9,800百万円で営業利益500百万円、機能性材料が売上高17,400百万円で営業利益2,400百万円、その他が売上高16,200百万円で営業利益400百万円、調整額が売上高マイナス7,600百万円で営業利益プラス700百万円としている。
重点施策としては、印刷インキ・機材(日本)では環境配慮型・省エネ志向製品の積極展開、TPM活動の深化と物流最適化によるコスト削減など、印刷インキ(アジア)では地域密着型製品の開発推進とパッケージ分野の更なる拡大、環境配慮型・省エネ志向製品の積極展開など、印刷インキ(北米)ではフレキソ・グラビア・缶用インキの拡販、パッケージ関連設備の増強、研究開発拠点集約による開発力の強化など、印刷インキ(欧州)では拠点再構築による生産・販売体制の強化、ブランド力の強化など、機能性材料事業では差別化製品のタイムリーな開発、戦略的パートナーシップの強化などを推進する。
4. 積極的な設備投資で生産能力増強
成長を加速させるための総投資枠として28,000百万円(設備投資計画18,000百万円、戦略的投資枠10,000百万円)を想定し、設備投資額は3年累計18,000百万円(印刷インキ事業8,000百万円、機能性材料事業3,900百万円、国内工場再構築関連1,600百万円、通常投資他4,500百万円)としている。
地域別には日本8,500百万円、アジア4,300百万円、北米4,700百万円、欧州500百万円としている。
減価償却費は3年累計で14,100百万円の想定である。
設備投資内容は図表のとおりである。
日本では滋賀工場の新聞・オフセットインキ設備増設が2018年1月に完工した。
本格稼働で2018年12月期下期の収益改善に寄与する。
また東京工場でパッケージ用インキ技術棟を2018年5月に新設した。
北米ではウエストシカゴ研究所の拡張・充実が2018年完工予定である。
印刷インキとインクジェットインキの研究開発拠点を集約して開発を強化する。
またウィスコンシンのパッケージ用インキ設備増強が2019年完工予定である。
さらに中国のオフセットインキの第2工場、ベトナムのパッケージ用インキ第2工場、インドのパッケージ用インキ設備増強が、いずれも2019年完工予定である。
ESGへの取り組みも強化して中期的に収益拡大期待
5. ESGへの取り組みも強化して中期的に収益拡大期待
ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも強化している。
E(環境)では、環境マネジメント体制を強化し、強みを持つ環境配慮型製品の拡販や、再生可能エネルギーの導入(滋賀工場に太陽光発電所を設置など)を推進する。
S(社会)では、時間外労働削減に向けた労働環境の改善、従業員の安全確保に向けた労働安全衛生の充実、社会・地域への貢献を推進する。
労働安全衛生の充実では、国内4工場(東京、大阪、滋賀、羽生)でOSHMS認証を、海外5工場(米国、フランス、インド、ベトナム、タイ)で労働安全衛生に関する国際規格OHSAS(Occupational Health and Safety Assessment Series)認定を取得している。
G(ガバナンス)では、コーポレート・ガバナンス体制(意思決定・業務執行体制、監査体制、インターナショナル・アドバイザリー・ボード)を確立し、その機能強化を推進している。
世界的に環境対応型製品へシフトする流れが強まっている。
そして世界的に市場拡大・開拓余地も大きい。
先行してグローバル展開した実績、各国の地域特性に合わせて製品投入するノウハウ、環境配慮型高機能・高付加価値製品の開発・品揃え・高シェアが強みであり、グローバル展開の加速と環境配慮型高機能製品の拡販で、中期的に収益拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
2. 「中期経営計画2020」で2020年12月期経常利益150億円目標
2017年11月に3ヶ年の「中期経営計画2020(2018年ー2020年)Innovation for the Future~未来に向けた革新~」を策定した。
基本方針「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」をビジネステーマとして、情報メディアの多様化、食の安心・安全意識の高まり、環境規制の強化を背景とした印刷市場の変化に柔軟に対応し、CSR(企業の社会的責任)活動の充実や環境経営の推進を図ることにより、企業体質・経営基盤の強化に取り組むとしている。
そしてコア事業である印刷インキ事業及び機能性材料事業の拡大、コア事業で培った技術の応用展開による新規事業の創出を推進する。
目標数値には2020年12月期の売上高195,000百万円、営業利益13,000百万円、経常利益15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9,800百万円、ROE10%以上を掲げている。
新規事業の数値は織り込んでいない。
前提為替レートは1米ドル=112円である。
印刷インキ事業の成長戦略は、コア施策として既存印刷市場領域における環境配慮型製品の開発・投入、生産性向上製品の拡販、地域密着型製品の拡販を推進する。
そして3ヶ年で先進国市場において10%成長、新興国市場において40%成長を目指す。
拡販戦略製品は、環境配慮型製品(水性フレキソインキ・グラビアインキ、ノントルエン・ノンVOCインキ、ハイソリッドインキなど)、植物由来成分含有製品(ボタニカルインキ、ライスインキなど)、生産性向上製品(高感度UVインキ、EB硬化型インキなど)、地域密着型製品(グラビアインキ、新聞・オフセットインキなど)としている。
機能性材料事業の成長戦略は、デジタル印刷材料分野では産業用インクジェットインキのグローバル展開、未参入市場(建材・壁装材、ホーム&テキスタイル、アパレルなど)への展開、画像表示材料分野では最先端スペックに合致したカラーフィルター用顔料分散液の開発、中国市場への積極展開、機能性コーティング剤の分野では新機能性材料の開発・市場投入を推進する。
さらに新規事業の創出では、住宅・建築、生活環境、エネルギー、オートモーティブ、エレクトロニクスなど、既存の印刷業界以外の分野をターゲットとして、機能性フィルム用材料のガスバリア性コーティング剤、ディスプレイ分野の無機材料分散液、センサー分野でタッチパネル用材料となる光学用透明絶縁材料、メディカル分野で臨床検査用材料となる検査ガラス用コーティング剤、さらに着色剤として新規色材となる加飾成型用着色材料分散体などの開発・事業化を推進する。
3. セグメント別目標と重点施策
セグメント別(連結調整前)の目標数値は、印刷インキ・機材(日本)が売上高59,900百万円で営業利益2,600百万円、印刷インキ(アジア)が売上高46,600百万円で営業利益3,900百万円、印刷インキ(北米)が売上高52,700百万円で営業利益2,500百万円、印刷インキ(欧州)が売上高9,800百万円で営業利益500百万円、機能性材料が売上高17,400百万円で営業利益2,400百万円、その他が売上高16,200百万円で営業利益400百万円、調整額が売上高マイナス7,600百万円で営業利益プラス700百万円としている。
重点施策としては、印刷インキ・機材(日本)では環境配慮型・省エネ志向製品の積極展開、TPM活動の深化と物流最適化によるコスト削減など、印刷インキ(アジア)では地域密着型製品の開発推進とパッケージ分野の更なる拡大、環境配慮型・省エネ志向製品の積極展開など、印刷インキ(北米)ではフレキソ・グラビア・缶用インキの拡販、パッケージ関連設備の増強、研究開発拠点集約による開発力の強化など、印刷インキ(欧州)では拠点再構築による生産・販売体制の強化、ブランド力の強化など、機能性材料事業では差別化製品のタイムリーな開発、戦略的パートナーシップの強化などを推進する。
4. 積極的な設備投資で生産能力増強
成長を加速させるための総投資枠として28,000百万円(設備投資計画18,000百万円、戦略的投資枠10,000百万円)を想定し、設備投資額は3年累計18,000百万円(印刷インキ事業8,000百万円、機能性材料事業3,900百万円、国内工場再構築関連1,600百万円、通常投資他4,500百万円)としている。
地域別には日本8,500百万円、アジア4,300百万円、北米4,700百万円、欧州500百万円としている。
減価償却費は3年累計で14,100百万円の想定である。
設備投資内容は図表のとおりである。
日本では滋賀工場の新聞・オフセットインキ設備増設が2018年1月に完工した。
本格稼働で2018年12月期下期の収益改善に寄与する。
また東京工場でパッケージ用インキ技術棟を2018年5月に新設した。
北米ではウエストシカゴ研究所の拡張・充実が2018年完工予定である。
印刷インキとインクジェットインキの研究開発拠点を集約して開発を強化する。
またウィスコンシンのパッケージ用インキ設備増強が2019年完工予定である。
さらに中国のオフセットインキの第2工場、ベトナムのパッケージ用インキ第2工場、インドのパッケージ用インキ設備増強が、いずれも2019年完工予定である。
ESGへの取り組みも強化して中期的に収益拡大期待
5. ESGへの取り組みも強化して中期的に収益拡大期待
ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも強化している。
E(環境)では、環境マネジメント体制を強化し、強みを持つ環境配慮型製品の拡販や、再生可能エネルギーの導入(滋賀工場に太陽光発電所を設置など)を推進する。
S(社会)では、時間外労働削減に向けた労働環境の改善、従業員の安全確保に向けた労働安全衛生の充実、社会・地域への貢献を推進する。
労働安全衛生の充実では、国内4工場(東京、大阪、滋賀、羽生)でOSHMS認証を、海外5工場(米国、フランス、インド、ベトナム、タイ)で労働安全衛生に関する国際規格OHSAS(Occupational Health and Safety Assessment Series)認定を取得している。
G(ガバナンス)では、コーポレート・ガバナンス体制(意思決定・業務執行体制、監査体制、インターナショナル・アドバイザリー・ボード)を確立し、その機能強化を推進している。
世界的に環境対応型製品へシフトする流れが強まっている。
そして世界的に市場拡大・開拓余地も大きい。
先行してグローバル展開した実績、各国の地域特性に合わせて製品投入するノウハウ、環境配慮型高機能・高付加価値製品の開発・品揃え・高シェアが強みであり、グローバル展開の加速と環境配慮型高機能製品の拡販で、中期的に収益拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)