[東京 25日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は25日、福岡県金融経済懇談会後の記者会見(オンライン形式)で、冬季賞与や来年度の賃上げを見極めるまで、政策金利のフォワードガイダンス(先行きの指針)を変更する展開にはならないと述べた。日本の経済・物価情勢を踏まえれば、欧米の金利引き上げ競争に加わるべきではないと語った。
日銀は政策金利の先行きについて「現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準」として、先行きの利下げバイアスを維持している。この利下げバイアスをなくし、フォワードガイダンスを「中立化」すべきかとの質問に対し、中村委員は「なかなかまだそこまで考えるようにはなっていない」と述べた。物価が上昇しているとは言え、輸入物価高が主導していることや、実質賃金のマイナス圏推移を理由に挙げた。
賃金の先行きを占う上では、海外経済の減速が懸念される中で企業収益が高水準を維持できるかが焦点になる。世界経済について中村委員は、潜在成長率とされる3%程度の成長見通しはあまり変更がないと述べた。
米国では物価や賃金の高い伸びを抑制するために急ピッチの利上げが行われているが、需要は強く「米国がとんでもないリセッションに入るかと言えば、そんなことはないだろう」と指摘。中国は成長回復のために対策が取られているとした。
中村委員は今年2月の会見で、ドル/円について「今のように103円から115円くらいのレンジの中での安定した動きであれば、日本にとってみるとトータルでみればプラスなのではないか」と述べていた。
この日の会見では、3月以降の大幅な円安は「かなりボラティリティが高い状況だ」と指摘。円安の影響はプラス、マイナスそれぞれあり「経済実態がおかしくならないように見ていく」と話した。
物価2%目標については「世界の中で日本経済が成長を続けていくのなら、グローバル基準の2%の物価安定目標に向かって経済を変えていこうというのが正しい方向ではないか」と語り、目標を1%にするのは適切でないとの考えを示した。
(和田崇彦)