[ヒューストン 14日 ロイター] - 液化天然ガス(LNG)の輸出プロジェクトが向こう5年間に世界中で続々と稼働し、再生可能エネルギーや原子力と需要争奪戦を展開する見通しだ。これらがガス価格を不安定化させ、一部のプロジェクトに打撃を与えかねない事態となっている。
提案中と承認済みの新規LNGプラントを通じて、LNG供給量は2030年までに21年比で67%増えて年間6億3600万トンに達し、ガス市場に供給飽和を生み出す可能性がある。
LNG輸出を手がけるシェニエール・エナジーのジャック・ファスコ最高経営責任者(CEO)は先週の会議で「現在世界全体で総額1兆ドル超の天然ガスインフラの建設が進んでいる」と語り、ガス市場に恒常的な変化が起きているとの見方を示した。
カタールでは大規模なLNG生産拡大プロジェクトによって27年までに供給量が年間4900万トン増える。またBTUアナリティクスがまとめたデータでは、米国も各種プロジェクトのために供給能力が年間1億2500万トン高まってもおかしくない。
一方こうしたプロジェクトが将来直面するかもしれないのが価格の乱高下。実際昨年のLNG価格は、欧州からの需要で高騰した後、貯蔵施設が満たされ、顧客が高値に反発して他のエネルギーに利用を切り替えたのに伴って、下げに転じた。
他のエネルギーに目を向けると、世界の発電総量に占める風力・太陽光の比率は20年の1%から21年だけで10%強まで高まった。同時に原子力も復活し、日本は30年までに原子力発電の比率を昨年の7%弱から最低でも20%に引き上げる方針。フランスは35年までに6基の原子炉建設を提案している。
<需要に不確実性>
アナリストの見立てでは、LNG価格は27年ごろまで堅調を維持するものの、その後は需要見通しが不透明になるので、下落するかもしれない。
S&Pグローバルで世界のガス戦略を統括するマイケル・ストッパード氏は「業界が注目する大きな不確実性の1つは、高価格が中期的なガス需要にどれだけ大きなダメージを及ぼしているかにある」と指摘した。
同社は、価格高騰を理由として新興国からのLNG需要拡大が見込まれる時期を2年先に延ばしている。
インスティチュート・フォー・エナジー・エコノミクス・アンド・ファイナンシャル・アナリシスは先月のリポートで、LNGはコストがかかる信頼性のない燃料という評価を得てしまったので、最も大きな需要が期待されるアジアで幾つかの新たな輸入ターミナル建設計画に悪影響が生じるのではないかと懸念を表明した。
中国は昨年、新型コロナウイルスの感染対策としての行動規制と価格の不安定さを挙げて、LNGの購入を2割減らしている。米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)によると、昨年はインドとパキスタン、バングラデシュも3カ国合計で16%購入を削減した。
アクセンチュア・ストラテジーのムクシット・アシュラフ氏は、27年前後までしっかりした需要がLNG価格を支えると予想した上で「その後起きる展開がどうなるかは議論がより分かれるし、今年の投資判断に左右される」と述べた。
LNG関連設備機器の主要サプライヤー、ベーカー・ヒューズは1月、コスト増と金利上昇を背景に、LNGプロジェクトの最終判断が遅くなっていると警告した。
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