[フランクフルト 21日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は21日、主要政策金利を0.5%ポイント引き上げた。利上げは2011年以来11年ぶり。ロシアのウクライナ侵攻を背景に、ロシア産ガス供給不安による景気への影響が懸念されるものの、高進するインフレへの対応をより重視し、引き上げ幅は前回の理事会で示唆した0.25%ポイントの倍にした。
中銀預金金利をゼロ%に引き上げ、8年間に及んだマイナス金利政策を解除した。リファイナンス金利は0.50%、限界貸出金利は0.75%に引き上げられた。
ECBは声明で「今後の政策理事会で一段の金利の正常化が適切になる」と表明。「今日の決定でマイナス金利を脱し、理事会は金利決定について会合ごとのアプローチに移行できる」とした。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で「物価上昇圧力はより幅広い部門に広がっている」とし、食品やエネルギー価格、賃金の上昇などを指摘。「インフレは当面、好ましくないほど高水準にとどまる」という見通しを示した。
その上で「われわれはあらゆる点から見て、マイナス金利からの脱却に向けてより大きな一歩を踏み出すことが適切だと判断した」と述べた。
とりわけウクライナの戦争が長引き、エネルギー価格が長期間高止まりする可能性があるため、インフレ見通しに対するリスクは上向きかつ、強まったと警告した。
ただ、利上げペースが加速しても、ターミナルレート(利上げの最終地点)に変更はないとした。
ロイターのまとめた調査では、エコノミストは0.25%ポインの利上げを見込みつつも、0.5%ポイントの引き上げが必要という向きが大勢だった。
今後の金利の道筋については、早ければ9月8日の会合で追加利上げを実施する見通しを示しつつも、明確なガイダンスは示さず、さらなる利上げは適切で、会合ごとに決定されると表明するにとどめた。
ユーロ圏のインフレ率はECBが目標とする2%を大きく上回り、2桁に近付いている。今冬にガス不足が深刻化すれば物価はさらに押し上げられ、高インフレが定着する恐れがある。
ユーロはECBの決定を受けて一時0.8%高の1.0261ドルとなったが、ラガルド氏の会見が始まると前日比でマイナス圏に沈んだ。
<新たな債券購入措置>
ECBは市場安定化に向け、多額の債務を抱える南欧の金利が上昇することによる「域内格差」を是正する新たな債券買い入れ措置、伝達保護措置(TPI=Transmission Protection Instrument)」を発表した。
TPIの運用について「買い入れ規模は、政策伝達上のリスクの深刻度による。買い入れに事前の制約はない」とし、「ユーロ圏域内における金融政策スタンスの円滑な波及を確実にする」とした。
買い入れの対象は、欧州連合(EU)の財政ルールを順守し、「深刻なマクロ経済的不均衡」に直面していない国の期間1─10年の公的部門の債券となる見通し。新型コロナ復興基金の中核である「復興・強靭(きょうじん)化ファシリティー」の義務順守と債務の持続性に関する審査も必須条件となる。
このところイタリア、スペイン、ポルトガルなど債務水準が高い国々の利回り上昇が加速していたが、関係筋によると、現時点でどの国も新たな措置を活用する必要はないとECBは認識しているという。また、ユーロ圏の全ての国が適用条件を満たしている。
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