■中期成長戦略とその進捗状況
1. 成長戦略の全体像
ヘリオス テクノ ホールディング (T:6927)は、中長期の成長戦略に向けたグループ全体の基本方針として、以下の3つを掲げている。
すなわち、1)M&A、他社との戦略的提携、2)新製品の開発・拡販、3)既存事業分野のサービス収入の拡大、の3点だ。
この3項目は従来から変更はない。
会社概要の項で述べたように、同社の事業はナカンテクノ、フェニックス電機、日本技術センターの3つの中核事業会社で展開されており、成長戦略の3つの項目も、それぞれの事業会社において実行していく立て付けとなっている。
ナカンテクノは3項目の成長戦略全般に取り組んでいるが、フェニックス電機と日本技術センターでは市場環境や事業の特性、企業体力等に鑑み、ポイントを絞って取り組んでいる。
HRPのバリエーション拡大、3D印刷技術、大型の配向膜製造装置など、新製品の開発が順調に進捗
2. ナカンテクノにおける進捗状況
ナカンテクノは子会社のリードテックとともに、3つの成長戦略に取り組んでいる。
(1)M&A・戦略的提携
M&A・戦略的提携では、半導体等新規事業分野への進出を狙っている。
中国のメーカー及びファンドと組んで、日本メーカーの装置開発技術や生産技術をベースに東アジアを中心に販売拡大を図るというのが具体的な方針だ。
今後、適切な案件が見つかれば半導体製造装置事業への進出を果たすことになるとみられる。
同社は、外部コンサルタントなども活用しながら対象企業の発掘・選定を進めている状況だ。
これまでのところの実績として、複数のM&A案件が持ち込まれた。
各案件について検討はしたものの、これまでのところ具体的成果には至っていない。
しかしながら同社は、半導体分野への参入意思とM&Aへの意欲を表明したことで、自社の存在感が強まったと手ごたえを感じているもようだ。
M&A等による既存事業の拡大では、ナカンテクノが2016年10月にリードテックを子会社化したことが大きな進捗と言える。
リードテックはHRPの大型案件の生産・納入で重要な役割を果たし、納期の順守に大きく貢献したほか、中古プラント移設事業でも期待通りの実績を上げている。
(2)新製品の開発・拡販
新製品による成長戦略ではHRP(高精細プリンター)への期待が高まっている。
同社はインクジェット、グラビア、オフセットなど各種の印刷方式についてHRP技術を開発・商品化しているが、前述のように2018年3月期は、高精細インクジェットプリンターの大型案件が収益に貢献した。
この大型案件はスマートフォンを最終需要先とする有機ELパネル向けとみられる。
しかし、高精細インクジェットプリンターの用途は有機ELや液晶パネルなどのFPD製造に用途が限定されるわけではない。
“高精細”は、位置決め精度や線の細密さ、塗布面の均一性、膜の薄さ、などに具体的特性として現われる。
これらの特性を活かして、同社自身にも想像がつかないような用途に使用される可能性もあり、中長期的に息の長い製品に成長する可能性がある
2018年3月期にみられた技術的な進捗としては、3D印刷技術の完成がある。
これはいわゆる3Dプリンタではなく、同社の高精細印刷技術を生かして、立体的なものに均一な膜厚で印刷・コーティングする技術だ。
最も典型的な事例としては、曲面に対する印刷技術が挙げられる。
この技術も独創性が高い技術であり、用途開発が進めば大型製品に育つ可能性があると弊社ではみている。
3D印刷技術の具体的な市場として期待されるのは曲面を採用した表示装置だ。
その主たる向け先は自動車の運転席回りだ。
自動車においてはミラーレス化や自動運転技術の採用の流れにある。
これらはカメラを搭載することになるため、必然的にそのモニターとして表示装置が増加すると予想される。
その際、視認性を確保するために曲面デザインが採用されるとの見方だ。
曲面ディスプレイについては従前から様々な製造技術が検討されているが、印刷はコストの面で期待が高く、同社はそこに取り組んでいる。
(3)既存分野でのサービス収入の拡大
サービス収入の拡大というテーマでは、中古プラント(半導体製造装置やFPD製造装置)の中国への仲介・移設や既納入設備に対する保守・メンテナンス、及び消耗品販売の収益化に取り組んでいる。
2018年3月期は前述の大型HRPに注力したこともあり中古プラントの売上高は減収となったが、2019年3月期には過去に受注した案件の納期を迎え、大幅増収に転じる見通しだ。
同社が中古プラントビジネスで成果を出している背景には、中古設備を仕入れる仕入力、搬入・据付の技術力に加えて、ナカンテクノが有する中国での人脈がある。
中国における製造装置への需要は依然として強く、液晶パネルを中心としたFPD製造装置の中古プラントビジネスは、今後も着実に成長していくと期待される。
保守・メンテナンスや消耗品販売については、事業セグメント別動向の項で前述したように、本格的拡大期に入ってきたとみられる。
これらのビジネスは既納入の各種製造装置の積み上がりによって拡大するストック型モデルである。
同社では、単なる修理・メンテナンスにとどまらず、顧客に対して、機能向上や長命化などに繋がる改良工事などを提案する“攻めの営業”で臨む方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
1. 成長戦略の全体像
ヘリオス テクノ ホールディング (T:6927)は、中長期の成長戦略に向けたグループ全体の基本方針として、以下の3つを掲げている。
すなわち、1)M&A、他社との戦略的提携、2)新製品の開発・拡販、3)既存事業分野のサービス収入の拡大、の3点だ。
この3項目は従来から変更はない。
会社概要の項で述べたように、同社の事業はナカンテクノ、フェニックス電機、日本技術センターの3つの中核事業会社で展開されており、成長戦略の3つの項目も、それぞれの事業会社において実行していく立て付けとなっている。
ナカンテクノは3項目の成長戦略全般に取り組んでいるが、フェニックス電機と日本技術センターでは市場環境や事業の特性、企業体力等に鑑み、ポイントを絞って取り組んでいる。
HRPのバリエーション拡大、3D印刷技術、大型の配向膜製造装置など、新製品の開発が順調に進捗
2. ナカンテクノにおける進捗状況
ナカンテクノは子会社のリードテックとともに、3つの成長戦略に取り組んでいる。
(1)M&A・戦略的提携
M&A・戦略的提携では、半導体等新規事業分野への進出を狙っている。
中国のメーカー及びファンドと組んで、日本メーカーの装置開発技術や生産技術をベースに東アジアを中心に販売拡大を図るというのが具体的な方針だ。
今後、適切な案件が見つかれば半導体製造装置事業への進出を果たすことになるとみられる。
同社は、外部コンサルタントなども活用しながら対象企業の発掘・選定を進めている状況だ。
これまでのところの実績として、複数のM&A案件が持ち込まれた。
各案件について検討はしたものの、これまでのところ具体的成果には至っていない。
しかしながら同社は、半導体分野への参入意思とM&Aへの意欲を表明したことで、自社の存在感が強まったと手ごたえを感じているもようだ。
M&A等による既存事業の拡大では、ナカンテクノが2016年10月にリードテックを子会社化したことが大きな進捗と言える。
リードテックはHRPの大型案件の生産・納入で重要な役割を果たし、納期の順守に大きく貢献したほか、中古プラント移設事業でも期待通りの実績を上げている。
(2)新製品の開発・拡販
新製品による成長戦略ではHRP(高精細プリンター)への期待が高まっている。
同社はインクジェット、グラビア、オフセットなど各種の印刷方式についてHRP技術を開発・商品化しているが、前述のように2018年3月期は、高精細インクジェットプリンターの大型案件が収益に貢献した。
この大型案件はスマートフォンを最終需要先とする有機ELパネル向けとみられる。
しかし、高精細インクジェットプリンターの用途は有機ELや液晶パネルなどのFPD製造に用途が限定されるわけではない。
“高精細”は、位置決め精度や線の細密さ、塗布面の均一性、膜の薄さ、などに具体的特性として現われる。
これらの特性を活かして、同社自身にも想像がつかないような用途に使用される可能性もあり、中長期的に息の長い製品に成長する可能性がある
2018年3月期にみられた技術的な進捗としては、3D印刷技術の完成がある。
これはいわゆる3Dプリンタではなく、同社の高精細印刷技術を生かして、立体的なものに均一な膜厚で印刷・コーティングする技術だ。
最も典型的な事例としては、曲面に対する印刷技術が挙げられる。
この技術も独創性が高い技術であり、用途開発が進めば大型製品に育つ可能性があると弊社ではみている。
3D印刷技術の具体的な市場として期待されるのは曲面を採用した表示装置だ。
その主たる向け先は自動車の運転席回りだ。
自動車においてはミラーレス化や自動運転技術の採用の流れにある。
これらはカメラを搭載することになるため、必然的にそのモニターとして表示装置が増加すると予想される。
その際、視認性を確保するために曲面デザインが採用されるとの見方だ。
曲面ディスプレイについては従前から様々な製造技術が検討されているが、印刷はコストの面で期待が高く、同社はそこに取り組んでいる。
(3)既存分野でのサービス収入の拡大
サービス収入の拡大というテーマでは、中古プラント(半導体製造装置やFPD製造装置)の中国への仲介・移設や既納入設備に対する保守・メンテナンス、及び消耗品販売の収益化に取り組んでいる。
2018年3月期は前述の大型HRPに注力したこともあり中古プラントの売上高は減収となったが、2019年3月期には過去に受注した案件の納期を迎え、大幅増収に転じる見通しだ。
同社が中古プラントビジネスで成果を出している背景には、中古設備を仕入れる仕入力、搬入・据付の技術力に加えて、ナカンテクノが有する中国での人脈がある。
中国における製造装置への需要は依然として強く、液晶パネルを中心としたFPD製造装置の中古プラントビジネスは、今後も着実に成長していくと期待される。
保守・メンテナンスや消耗品販売については、事業セグメント別動向の項で前述したように、本格的拡大期に入ってきたとみられる。
これらのビジネスは既納入の各種製造装置の積み上がりによって拡大するストック型モデルである。
同社では、単なる修理・メンテナンスにとどまらず、顧客に対して、機能向上や長命化などに繋がる改良工事などを提案する“攻めの営業”で臨む方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)