政府は2016年4月の産業競争力会議で、新3本の矢で目指すGDP600兆円経済の実現に向け、新たな有望成長市場創出を目玉とする成長戦略の全体像を示している。
そのなかで、IoTやビッグデータ、人工知能、ロボットの活用による第4次産業革命により、2020年には付加価値創出30兆円を目指すとしている。
あらゆるモノがインターネットに接続するIoTの世界。
それだけに関連テーマとなると幅広い分野に広がる。
そのビジネスの流れは、以下のように考えられる。
(1)「センサー」でモノから情報を取得する(センシング)
(2)インターネットを経由して「クラウド」にデータを蓄積
(3)クラウドに蓄積されたデータを分析するほか、「人工知能」を活用
(4)分析結果に応じて最適な環境や行動指示(アクチュエート)が行われる(ヒトにフィードバックする)。
これらの事業を1社のみで行うのは難しく、結果的に、センサーなどの企業や、クラウドや人工知能などで得意分野を持つ企業などが、提携や協業によってこの分野を推進していくことになると考えられる。
そんななか、日本企業のシリコンバレーへの興味が急速に高まっているとの報道もある。
多くの日本企業の幹部がイノベーションを理解するためにシリコンバレーを訪れているようであり、現地のスタッフたちはこれを「イノベーション観光」と呼んでいるようである。
注目されるのは、日本企業がシリコンバレーに注目するのは、3回目ということ。
1回目は1980年代から90年代にかけてのパソコンに代表されるハードウエアであり、2回目は90年代の終わりから2000年代初頭の、インターネットがテーマだった。
そして、今回は、AIやフィンテック、IoTへの期待が高まっているという。
また、これまでシリコンバレーに興味を持つ企業の多くはIT関連企業だったが、IoTでは全ての日本企業を支えることになるとみられており、様々な企業が関心を示している。
IoTについては、ドイツが国を挙げて製造業の高度化に取り組むなど海外が先行するなか、IoTに欠かせないセンサーや通信部品は日本勢の得意分野ではある。
世界に対抗する攻めの姿勢によりIoT分野での成長の可能性が一段と高まることになろう。
その他、国の取り組みとしては、特許庁は11月14日、IoT関連技術の特許分類を世界に先駆けて新設した。
来年から順次、特許庁が一般公開している特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を通じてIoT関連技術に関する特許情報を網羅的に収集・分析することが可能となる。
これにより、IoT関連技術の研究・開発が一層効率的に進むことや、どのような事例が特許として登録されているのかを把握し、同技術に関する特許取得の予見性が向上することが期待される。
特許取得の予見性が高まることで企業の研究開発も積極的になる可能性が考えられ、IoTに関連する技術を持つシステムを手掛けるソリューション企業の成長が加速する可能性がある。
ソリューション企業を中心に、足元の業績において既にIoTに関連する事業が収益に寄与してきている企業のほか、IoT関連分野を中核事業として投資を強化している銘柄の動きには、ぜひ注目していきたいところである。
執筆
フィスコ情報配信部長 村瀬智一
※フィスココイン専用「特別レポート11月号」より抜粋
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