みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。
足元で新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が世界的に拡大しており、経済減速懸念の高まりから各国の株式市場は暴落、商品市況も非常に荒い動きとなっています。
そんななか、これまで安全資産と名高かった金価格も直近で不安定な値動きをみせています。
一般的に株価下落時にはリスク資産から金へと資金が流れやすくなることから、金価格は上昇しやすいという特徴があります。
実際に、日経平均が1月に年初来高値の24000円台をつけた後に2月末にかけてじりじりとレンジを切り下げる株価下落時において、金価格(TOCOM、期先)は2020年2月末に1グラム=6000円に迫る勢いで上昇しました。
しかし、その後はというと、3月半ばにかけて急速に下落基調となり、同月17日には一時1グラム=5000円を割り込む場面もありました。
2月末にかけての金価格の上昇については、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、今後の世界経済・企業業績悪化懸念への影響を警戒する流れとなったことで、リスク回避目的の買いが金へと向かい、いわば教科書通りの展開となりました。
また、日米をはじめとした世界各国による利下げ発表などの金融緩和政策の動きがあったことも、金利のつかない安全資産である金にとってのサポート要因として意識されました。
一方で、その後の3月半ばにかけては、それまで海外投資家の間でアジア特有の感染症としての認識が強かった新型コロナウイルスが想定以上の世界的な蔓延をみせました。
これにより、海外投資家のリスクマネーが東京市場から流出し、日経平均も20000円を割り込み、その後も19000円や18000円、17000円といった節目を次々に下回る展開となりました。
米NYダウも節目の20000ドルをついに割り込むなか、コロナウイルスによる経済減速懸念に加え、日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)や米VIX指数の急騰などもあり、機関投資家によるリスクマネーの現金化(キャッシュ化)の流れが一段と強まりました。
世界的に株価下落が強まるなかで、これまで非常に力強い上昇基調を描いて利益の出ていた金や不動産投資信託(REIT)に対しても、利益を確定してキャッシュ化をする動きが強まりました。
要するに、想像以上のウイルス蔓延や株価下落など、世界的に想定外の出来事が立て続けに起こったことで、リスク資産を圧縮する動きが強まり、株安にもかかわらず、金にも換金売り圧力が強まることとなったわけですね。
現状は世界各国の財政政策に対する期待感などで下げ渋る場面もみられているものの、総じて現金化ニーズは根強く、金価格は荒い値動きとなっています。
いったん金からは大幅に資金が流出している分、反発局面での大口の買いなどで値幅は出やすいとみられる一方で、各国の金融政策期待で株式市場が上昇する場面も散見されており、金にとっては資金の逃げ足が速まる局面も増えてくる可能性があります。
引き続き不安定な値動きが続く可能性があるなか、株式市場と各国の金融政策の動向を慎重に見極める必要がありそうですね。
フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ(参考 TOCOM)