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コラム【アナリスト夜話】:CoCo債価格急落は「炭鉱のカナリア」?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)

発行済 2017-08-16 14:09
更新済 2017-08-16 14:33
コラム【アナリスト夜話】:CoCo債価格急落は「炭鉱のカナリア」?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)
先週、銀行債に突然異変が起こりました。
年初来、銀行債の価格は財務の改善で、ほぼ一貫して上昇し続けてきました。
ところが、先週後半から、世界の銀行の債券価格が下落(取引利回りは上昇)し始め、株式もやや下落しています。


特に売られているのが、銀行債のなかでもCoCo債と呼ばれる、資本に近い永久債です。
Contingent Convertible Bondの略で、銀行の資本が劣化すると株式に強制的に転換されたり、価値がゼロになったりするという高リスク債です。

その代わり利回りが高いので、「バンク・キャピタル・ファンド」などの投信に組み込まれ、マイナス金利下の日本でも、地銀や個人に人気を博しています。


例えば、ドイツ銀行が2014年11月に発行したCoCo債の場合、年初来価格は上昇・利回りは低下し続けましたが、先週初頭に反転し、利回りは約60bpも上昇しました。
金融情報のフィナンシャル・アドバイザリー・サービス社によれば、先週末は、CoCo債だけでなく、一部の米国のジャンク債の利回りも急落したようです。


景気サイクルの中で、回復期に先行して上昇するのが株式です。
一方、後退期に真っ先に下落するのが、こうした高リスク債券です。
かつて、炭鉱の危機を察知するために、カナリアが使われましたが、金融・クレジット市場でその役割を果たすのがこれらの高リスク債です。


世界の総債務残高は、世界金融危機以降、平均年518兆円ずつ増え、1京8,000兆円という天文学的数字に膨れ上がりました。
金利の上昇で企業の利払い負担も上昇し始めました。
今回は、夏場の薄い市場に大口の利食いが出ただけの、一時的な動きである可能性もありますが、炭鉱のカナリアの鳴き声にもそろそろ注意を払い始めた方がいいかもしれません。


マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那
(出所:8/14配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)

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