[ワシントン 31日 ロイター] - 米フェイスブック(FB) (O:FB)のメッセージアプリ「ワッツアップ」を利用したマルウエア(悪意のあるプログラム)を通じて携帯電話が乗っ取られる被害で、米同盟諸国の高官らが標的となっていたことが、ワッツアップの内部調査に詳しい関係者らの証言で明らかとなった。
確認された被害者の「相当数」が最低でも世界20カ国にわたる政府高官や軍当局者だったといい、被害が及ぼす政治的・外交的な影響が懸念される。
ワッツアップは29日、世界20カ国で同社の利用者約1400人の携帯電話をハッキングして情報を収集する政府の活動を手助けしたとして、イスラエルのサイバー技術会社NSOグループを提訴。ワッツアップのビデオ通話システムを通じて複数の利用者の携帯電話にマルウエアが遠隔で送り込まれたとした。[nL3N27F06T]
ハッキングを受けたロンドン在勤の人権専門の弁護士は、4月1日に自身の携帯電話が乗っ取られそうになった際の端末の状態を撮影した写真をロイターに公表した。
誰がマルウエアによるハッキングを実行したのかは不明。ただ、NSOは端末の情報を盗むマルウエアである「スパイウエア」を政府の顧客に限って販売しているとしてきた。
関係筋によると、ハッキング被害者の一部は米国やアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、メキシコ、パキスタン、インドに在住。米同盟諸国の高官というのがこれらの国を指すのかは不明。
NSOは発表文で、「誰が顧客で誰が顧客でないのかを公表したり、当社技術の個別の利用目的について話すことはできない」とした。NSOはこれまで、不正を否定し、同社製品はテロリストや犯罪者を取り締まるために政府に力を貸すのが唯一の目的だと説明している。
サイバーセキュリティーの研究者らはNSOの製品は権威主義的な政権の国々におけるデモ参加者など、幅広い標的に利用されているとし、NSOの事業目的に関する主張に疑問を呈してきた。
ハッキングの標的を特定するためにワッツアップに協力した研究機関シチズンラボの上級研究員ジョン・スコットレールトン氏は、政府当局者が標的になったのに驚きはないと指摘。
「法執行機関による捜査向けとされている技術の多くが、国家間や政治におけるスパイ活動に使われているというのは公然の秘密だ」とした。
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