[ワシントン 4日 ロイター] - 米政府から委託され、AI(人工知能)に関する調査を実施している委員会は4日、中間報告書を公表し、研究開発への投資拡大や、AIに対応した労働力の養成、国家安全保障分野への技術応用が必要だと指摘した。
昨年に米議会が設置し、米グーグルの元最高経営責任者(CEO)が委員長となっているThe National Security Commission on Artificial Intelligence(NSCAI)は、米政府が「主要な国家安全保障上の任務に組み込む成熟技術」として、AIを活用できるようになるまでには依然として大きな課題があることを挙げた。
元米国防副長官で、委員会の副委員長を務めるロバート・ワーク氏は記者団に対し、国家安全保障分野へのAI技術採用については、他国との協調した取り組みが重要になるとの見解を表明。日本やカナダ、英国、オーストラリア、欧州連合(EU)とこれまでに協議したことを明らかにした。
委員会はまた、AI分野での中国の進歩に懸念を示した。中国はこの分野に米国よりも多く投資していると指摘している。
報告書は、中国に50回以上言及。「中国はAI技術を移転するために数多くの手段で、開放された米国社会を利用している。合法な手段もあれば、そうでないものもある」と指摘した。
在ワシントンの中国大使館は、現時点でコメント要請に応じていない。
委員会のエリック・シュミット委員長は、記者団に対し「中国は2つの分野で先行している。1つは顔認証技術を利用した監視、もう1つはフィンテック(金融技術)だ」と説明した上で「彼らがAI全般で先行しているわけではない」とも述べた。
委員会が実施した研究者調査では「最も優れた研究論文や最初の研究論文は、依然として西側諸国で書かれており、中国は素早い追随者」であることが示されたとし、米国がAI分野の競争に勝つ手段は、まだあるとの見解を示した。
シュミット氏は現在、グーグルの親会社アルファベット (O:GOOGL)の技術アドバイザーで、以前にはアルファベットの会長やグーグルのCEOも務めていた。
このほか、委員会にはアマゾン・ドット・コム (O:AMZN)のクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」のアンドリュー・ジャシーCEOや、オラクル (N:ORCL)のサフラ・カッツCEOが含まれている。
報告書は、中国のAI研究者との提携をビザや輸出管理を通じて制限するべきかどうかについても議論し、米当局者が直面する課題として、業界や学界がそうした制限による米経済への打撃を指摘していることに言及した。
また、中国が人権侵害にAIを利用しているとして懸念を表明。中国のほかにも「少なくとも74カ国がAIを利用した監視を行っている」とし、このうち半分は「先進自由民主主義国だ」と指摘した。
最終報告書は、約1年後に完成する見通し。