[ニューヨーク/ワシントン/北京 27日 ロイター] - 中国の動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック、抖音)を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)が、ティックトックを中国事業の大半から切り離す取り組みを強化していることが、複数の関係者の話で明らかになった。米政府の安全保障上の懸念に対応した措置。
バイトダンスは2017年に米動画アプリ「Musical.ly」を約10億ドルで買収した。この買収を巡り、ロイターは今週、対米外国投資委員会(CFIUS)が調査を開始したと報じた。[nL3N27H3XU]
CFIUSは、外国企業による米国企業の買収を安全保障の観点から審査する。バイトダンスは、ティックトックが所有する個人情報は米国内で安全に保管されており、中国当局に漏洩することはないと、CFIUSを納得させようとしているという。
バイトダンスの取り組みは、米中が貿易戦争を繰り広げるなか、中国企業が米国で個人情報を取り扱うビジネスを展開できるかどうかの試金石といえる。
今年5月、中国のゲーム会社、北京昆侖万維科技 (SZ:300418)は、CFIUSの要求で、傘下の同性愛者向け出会い系アプリの売却に同意した。バイトダンスとしては、北京昆侖万維科技の二の舞は避けたい。
関係筋によると、バイトダンスは、CFIUSが10月に同社にアプローチする前に、ティックトック事業の分離に着手し、今年第3・四半期には、ティックトックの製品・事業開発部門やマーケティング部門、法務部門を同アプリの中国版「抖音(Douyin)」から切り離した。
また、夏場には、個人情報の保管体制を監査するコンサルタントを外部から雇ったという。バイトダンスは、米国ユーザーの情報はすべて米国内で保管し、バックアップはシンガポールにあると説明。ティックトックのコンテンツに中国政府の法的権限は及ばないとしている。
CFIUSの調査開始後、バイトダンスは、データ管理を監督するチームをカリフォルニア州で立ち上げた。このチームは、中国で働くエンジニアのティックトックのデータベースへのアクセスを認めるか、決定し、中国のエンジニアの行動を監視することになる。また、中国スタッフへの依存を減らすため、米国でエンジニアの採用を強化するという。
これらの措置が、CFIUSの懸念解消につながるか、効果は未知数だ。CFIUSを所管する米財務省の報道官は、CFIUSの個別案件に関する情報にはコメントしないと述べた。
法律事務所フォックス・ロスチャイルドLLPのパートナー、ネベナ・シミジスカ氏は「会社のオペレーションを地理的にも業務的にも中国から切り離せば、この会社は中国のオーナーや中国政府から本当に独立しているとCFIUSを納得させることができるだろう」と述べた。フォックス・ロスチャイルドLLPは、CFIUSの審査について企業に助言しているが、ティックトックの件は扱っていない。