[15日 ロイター] - 米アップル (O:AAPL)は15日、iPhoneの廉価版「SE」の新機種を4月24日に発売すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済が悪化し、出費を抑えたい消費者が増える中、低価格の新モデルを投入することで需要開拓を図る。
17日からオンラインでの注文を受け付ける。価格は399ドルからと、従来の廉価版「8」の販売価格449ドルを50ドル下回る。8の製造は停止される見通し。
新型SEは画面サイズが4.7インチと小さめだが、現行の最上位機種である「11Pro」と同じチップを搭載。ロック解除には顔認証システムではなく、指紋認証が使用されている。ワイヤレス充電や高性能カメラなどの機能も備えているが、第5世代移動通信システム(5G)には対応していない。色は黒、白、赤の三色。
クリエイティブ・ストラテジーズのアナリスト、ベン・バジャリン氏は、999ドルもする11Proよりも8などを購入する消費者が多いことにアップルは気付いたようだと指摘。価格が大きな役割を果たしているとした上で、5Gに関心のある消費者は上位機種に向かうだろうが、手頃な価格のiPhoneを求める消費者は5Gへの関心が低いとした。
アップルはハードウエアの売り上げが安定しない中、動画配信サービス「アップルTV+(プラス)」や「アップルミュージック」、 iCloudなどのサービス部門に投資してきた。
低価格モデルの投入で、これらのサービス利用者が増える可能性がある。
新型SEにはアップルTV+の1年無料視聴サービスがついてくる。
アトランティック・エクイティーズのアナリスト、ジェームズ・コードウェル氏は「価格の低さから、iPhoneSEがアップルの収益に大きく貢献するとは考えにくいが、サービスの利用者層の拡大にはつながる可能性があり、それは長期的には同社のサービス収入につながるだろう」と語った。
アシムコのアナリスト、Horace Dediu氏は、低価格モデルの購入者はその製品がアップルの最新チップを搭載しているかどうかを気にしないだろうが、サードパーティーのアプリ開発者は注目していると指摘。
高性能機種のユーザーが増えれば、開発者は拡張現実(AR)や人工知能(AI)を使ったアプリ開発に意欲を燃やし、アップル製品の競争力が高まる可能性があるとした。
これまで新型iPhoneの発表は大勢のファンを前に行われてきた。しかし、現在は新型コロナ対策として、アップルが拠点とするカリフォルニア州サンタクララ郡では大規模集会が禁止されている。
アップルの店舗は中華圏を除く全世界で閉鎖されている。
アップルは、同社製品を扱う携帯電話事業者や小売り業者などのパートナーに対し、実店舗で販売するかどうかの判断を任せていると説明。パートナー企業も新型コロナ対策で店舗閉鎖や営業時間短縮を強いられる中、多くの業者は顧客にオンラインでの販売を案内している。
米家電量販大手ベストバイ (N:BBY)は、ウェブサイト上で新型SEの事前注文が可能で、宅配か店先での受け取りが選べるとしている。
米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ (N:VZ)は15日、ロイターに対し、新型SEの店舗での販売はしないと明らかにした。
アップル株は0.9%安で終了。S&P総合500種の2.2%安より下げは限定された。
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