[東京 2日 ロイター] - 日立製作所は2日、スイスの重電大手ABB (S:ABBN)のパワーグリッド(送配電)事業を7400億円で買収して発足した日立ABBパワーグリッドについて、2024年ごろには企業価値を買収時の倍にしたいとの考えを示した。世界的な脱炭素やデジタル化の動きが追い風になるとみている。
西野壽一副社長は2日のオンライン会見で、次期中計の最終年に当たる24年に向けて「買収したときの企業価値の倍ぐらいにしたい」と述べた。新型コロナウイルス終息後の経済復興の局面に向け、脱炭素の動きを受けた再生可能エネルギーでのパワーグリッド技術のニーズや、エネルギーインフラのデジタル化投資の増加を見込む。
東原敏昭社長兼CEOは、ABBパワーグリッドの運用制御技術(OT)や製品と日立のIoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」とを組み合わせ、「より高度なエネルギーソリューションを世界中で提供する」と述べた。欧米や中国、アジアのほか、日立が手薄だった南米や中東にも拠点があるとし、「地域ごとのニーズに合った社会イノベーションを推進したい」とした。
日立の業績への影響などは、4―6月期決算発表時に示す。今期は7月以降の9カ月分が反映される。ABBの19年12月期の送配電事業を含む非継続事業の売上高は90億3700万ドル、営業利益は6億6000万ドルだった。
日立ABBパワーグリッドは1日に営業を開始した。発電量の事前予測が難しい再生可能エネルギーの柔軟で安定した運用や、電力会社の送配電線への接続の支援などを手掛ける。エネルギーだけでなくモビリティや産業といった分野のほか、ライフ分野ではスマートシティ関連やエネルギー貯蔵など、ITセクターではデータセンター管理などの事業を拡大していく方針。
日立は18年12月にABBの送配電事業の買収を発表。約7400億円で株式の80.1%を取得した。アドバイザリー費用は約100億円。23年以降に、残る19.9%を取得し完全子会社とする予定。
(平田紀之)