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焦点:劣勢だった中国テンセント、クラウド市場でアリババ追撃

発行済 2020-07-07 11:57
更新済 2020-07-07 12:00
© Reuters.

[香港/上海 3日 ロイター] - 中国のクラウドサービス企業にとって、新型コロナウイルス感染流行の発生はまるで「レインメーカー」(強引に利益をもたらす人)だった。新型コロナを受けた企業の業務リモート化や、感染抑制や移動制限を管理するための当局によるアプリやシステムの開発が広域で強い追い風になった。

クラウド市場首位のアリババ・グループ・ホールディング (N:BABA)に追い付くべく新たな態勢に入っていた騰訊控股(テンセント・ホールディングス) (HK:0700)にとって、新型コロナは特に完璧なチャンスとなった。

テンセントは2018年9月にクラウド事業を重要な成長分野と位置付け、これまでにない積極姿勢を示し始めていたが、従業員らによると、新型コロナで取り組みが一段と加速した。

同社クラウド部門の消息筋は「今ではアリババとの競争が非常に激しくなっており、セールスチームは互いに、あらゆる案件で競い合っている」と明かした。

テンセントは今年だけでもクラウド部門で3000人以上を採用。2月に中国で封鎖措置が取られ、企業向けビデオ会議サービスの需要が急増すると、2カ月前にちょうど立ち上げていたクラウドサービス「テンセント・カンファレンス」支援のため、たった8日間でクラウドサーバーを10万台増強した。これは同社に言わせれば、中国のクラウド史上で初の快挙だ。

さらに内製設計のクラウドサーバーの利用を拡張。中国中央部のクラウド関連プロジェクトやスマートシティー計画を手掛けられるように、武漢市のデジタルセンター建設を加速すると表明した。新型コロナで打撃を受けた中小企業にクラウドサービスを無料で支援する中央政府のプロジェクトにも参加した。

5月にはクラウドコンピューティングを含むハイテクインフラ事業に5年間で計5000億元(約7兆5000億円)を投資すると発表した。これはアリババが、向こう3年でクラウドインフラに2000億元を投資すると発表したわずか数週間後だった。

テンセントの国際ビジネスグループの楊宝樹副社長は4月のロイターのインタビューで、企業向けやオンライン授業のためのクラウド事業にもっと参入するとの並々ならぬ意欲を示し、「実際に需要や問い合わせが増えている。多くの事業を喚起する良いきっかけになっている」と述べていた。

調査会社カナリスのデータによると、第1・四半期の中国のクラウドインフラサービス市場は39億ドル(約4200億円)と、前年同期から67%も拡大した。シェアの首位はアリババで44.5%。13年にアリババから4年遅れてクラウドに参入したテンセントは14%だった。華為技術(ファーウェイ)のシェアも14%。

チャイナ・ルネッサンスのハイテクアナリスト、アレックス・リュー氏は「テンセントはこの市場参入でアリババに後れを取った。しかし、この分野でアリババに追いつき、あるいはいつか首位を奪うことを願って、この事業特有の比較的長い投資サイクルに耐えようとしている」と話した。

テンセントでの昨年のクラウド部門の売上高は会社全体の4.5%。アリババではこれが8%だった。

<法人向けに期待>

テンセントの従業員らがロイターに語ったところによると、同社は法人向け分野の強化に熱心に取り組んでいる。この分野は顧客1社向けにいちから設計することがしばしばで、政府がらみでもそうだ。これはアリババが優位な分野。テンセントは消費者向けの製品や設計により強みがある。

テンセントのクラウド事業に詳しい別の関係者は「テンセントの遺伝子は消費者向け分野では優れている。しかし法人向け分野ではプロダクトマネジャーがいなかったし、人材は採用したばかりで、それももともと消費者向け分野でやっていた連中だった。だから彼らの発想を変えるのに時間は少々かかった」と話した。

テンセントはこうした内容についてコメントを拒んだ。

テンセントが近年、事業拡大を進めた1つが政府契約だ。こうした案件は売上高の面では比較的市場に占める比率は小さいが、受注すればはくが付き、民間セクターから顧客を誘致するのに役立つ。同社は17年に福建省政府の情報プラットフォームプロジェクトの競争入札価格で0.01元を示し、受注獲得への決意を浮き彫りにした。

中国の政府調達の記録によると、16年から17年にかけて、政府機関、国営企業、研究機関のクラウド関連契約のうち、アリババが取ったのは28件。テンセントはわずか7件だった。しかし18年になると双方とも28件で並んだ。19年には、テンセントの46件に対し、アリババが49件と再び単独首位に立った。

(Pei Li記者、Josh Horwitz記者)

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