[ニューヨーク/ニューヨーク 6日 ロイター] - 短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は7日、数日以内に香港市場から撤退することを明らかにした。中国が香港の反体制的な活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)を施行したことを受け、撤退を決定した。
国安法への対応を巡っては、フェイスブック (O:FB)、グーグル、ツイッター (N:TWTR)を含め、大手ネット各社が相次いで香港当局の要請による利用者データの提供を停止している。
ティックトックの広報担当者はロイターの取材で「最近の出来事を踏まえ、香港での運営を停止することを決定した」と述べた。
香港政府は6日夕、国安法の細則を新たに公表した。国安法では、国家安全保障を脅かすと判断されるコンテンツについて、警察当局が削除を求めることができるなど、ネット企業への監視強化も盛り込まれている。
中国外務省の趙立堅報道官は、ティックトックの対応に関連し、国安法の施行でビジネス環境は改善すると強調。さらに「関係各所が中国の主権や安全を守る権利を公正、客観的、合理的に捉え、香港問題に関して慎重に発言・行動するとともに、選択的に障壁を作ったり問題を政治化しないことを期待する」と表明した。
ティックトックは中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営し、米ウォルト・ディズニー (N:DIS)の幹部だったケビン・メイヤー氏が最高経営責任者(CEO)。メイヤー氏は以前、ユーザーデータは中国に保管されていないと述べている。
また、同社は以前、コンテンツ検閲や利用者情報提供に関する中国政府からの要請には従わない方針も示しており、要請を受けたこともないとしていた。
事情に詳しいある関係筋によると、香港市場は規模が小さく赤字だった。昨年8月時点の発表では、香港の利用者は15万人に上った。
米調査会社センサー・タワーによると、米アップル (O:AAPL)と米グーグル (O:GOOGL)のアプリ配信サービスを通じたティックトックの全世界のダウンロード数の累計は第2・四半期に入ってから20億回を超えた。
関係筋によると、香港撤退は、香港が中国政府の管轄下に完全に入るかどうかが不明なのが理由だという。
ティックトックは中国本土で利用ができないように設計されている。それが海外の利用者にアピールするポイントの一つだった。
バイトダンスは中国で、類似する短編動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」を展開している。
バイトダンスの広報担当者によると、抖音を香港市場に導入する計画はないが、本土の中国人が香港に旅行したり滞在するため、同アプリは既に香港で多数の利用者がいる。
抖音は海外のアプリ配信サービスでは入手できないが、関係筋によると、香港ではティックトックの利用者よりも抖音の利用者のほうが多い。
バイトダンスの中国部門のCEO、Zhang Nan氏は声明で「香港には多くの抖音ユーザーがおり、引き続きサービスを提供する」と述べた。
香港中文大学のFang Kecheng氏は、今回のティックトックの動きについて、海外進出を目指す中国企業のジレンマを浮き彫りにしていると指摘。「国内の政策に従い、中国政府と中国国民の反発を買わないようにする必要がある。バイトダンスが(抖音から)ティックトックを切り離したのも同じ戦略だ」と述べた。
*内容を追加しました。