[ワシントン 27日 ロイター] - 米首都ワシントンの連邦地裁は27日、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を巡り、米アプリストアからの新規ダウンロードを禁止するトランプ政権の命令を一時差し止める判断を示した。
禁止措置は米アップルと米アルファベット傘下 グーグルが運営するアプリストアを対象に、同日午後11時59分に発効する予定だった。
同地裁は同時に、11月12日に米商務省がTikTokに対して導入を予定している他の制限を差し止めることは「現時点で」見送るとの判断を示した。TikTokはこれらの制限が実施されれば米国で同アプリが使用できなくなると主張していた。
同社の弁護士は27日午前の審理で、ダウンロード禁止措置は「前代未聞」で「不合理」だと強調。「進行中の協議で禁止する必要がなくなるかもしれないのに、今夜禁止する合理性はあるのか」と疑問を呈した。
米商務省は「差し止めに従う。そのための措置を直ちにとった」とする声明を発表した。政府として上訴するかどうかには言及しなかった。
TikTokは地裁の差し止め判断を歓迎した上で、「大統領が先週、原則支持したわれわれの提案を合意にまとめるため、政府との対話を続ける」と表明した。
TikTokを傘下に持つ中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)は今月20日、米事業について新たな子会社「TikTokグローバル」を設立し、米オラクルと米ウォルマートが一部出資することで暫定合意したと発表。合意の細部について、米中両政府の懸念解消に向けた協議が続けられている。
合意案は対米外国投資委員会(CFIUS)による承認が必要。
米司法省は、米国人がTikTokを引き続きダウンロードできるようにする一時差し止めの判断は「大統領の公式な国家安全保障上の判断への介入で、現在のCFIUSの交渉に関する状況を変化させ、全ての新たなユーザーに関し、デリケートで重要な個人情報が今後もバイトダンスに流出するのを認めるものだ」と批判した。
商務省は19日、TikTokの提携案が最終決定できるように、20日夜に予定していたTikTokの米国内での新規ダウンロードやアップデートの禁止を1週間延期すると発表していた。
関連の訴訟では、ペンシルベニア州の地裁が26日、TikTok向けコンテンツのクリエーターらによる同ダウンロード禁止措置の差し止め請求を棄却。一方、カリフォルニア州の地裁は中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」に対するダウンロード禁止措置やウィーチャットを通じた米国内での取引を禁止する措置を一時差し止める命令を出した。
中国の国営メディアは地裁の差し止め判断を歓迎。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進・編集長は28日、公式ツイッターで「モラルや正義、一般常識に沿った判断だ」と述べた。