[ロンドン 25日 ロイター] - 米フェイスブック (O:FB)などがヘイトスピーチ(憎悪表現)を容認しているとして同社への広告掲載をボイコットしている大手企業の一部は、ソーシャルメディア各社が最近になって打ち出した対策をある程度評価しつつも、広告掲載の再開については即断を控えている。
5月下旬に米ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが警官に殺害された事件の後、1000社を超える企業がフェイスブックのヘイトスピーチ対応を不満とし、夏からボイコット運動に参加した。
これを受け、業界団体の世界広告主連盟は今月23日、ヘイトスピーチなどの有害コンテンツについて定義を定め、共通の報告基準を採用することでフェイスブックやツイッター (N:TWTR)などのソーシャルメディア企業と合意したと発表した。
世界最大級の広告主である英蘭系日用品大手・ユニリーバ (L:ULVR)はロイターに対し、今回の措置は「正しい方向への良い一歩だ」とした上で、来年から米国でフェイスブックへの有料広告を再開するかどうかは言えないとした。
米コカ・コーラ (N:KO)も、フェイスブックと同社傘下の写真・動画共有アプリ企業、インスタグラムに関して様子見を続けており、見解を変えるかどうかのコメントを控えた。蒸留酒メーカーのビームサントリー (BSI.UL)は年内いっぱい有料広告を見合わせ、フェイスブックが姿勢をどう修正するかに基づいて来年、再検討する計画を示した。
広告技術会社、モダン・インパクトのマイケル・プリーム最高経営責任者(CEO)は「巨大なITプラットフォームを通じて流れる誤情報と何らかの関わりを持ってしまうことを、ブランドは非常に懸念している」と説明した。
ソーシャルメディアから広告を引き揚げるかどうかは、企業によっては厳しい決断となる。大手企業は姿勢を明確にする余裕があるが、コロナ禍で傷ついている中小企業にとっては「生死を分ける」(プリーム氏)決定だからだ。
フェイスブックの広報は25日、「広告主はおおむね戻ってきている。われわれの努力を認めているからだ」とした上で「われわれは決して満足してはいない。今後とも業界および顧客と協力し続けていく」との姿勢を示した。
広報によると、フェイスブックではヘイトスピーチの95%が報告前に検知されるようになっている。2017年はこの割合が23%だった。
しかし、米日用品大手、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) (N:PG)のマーク・プリチャード最高ブランド責任者は23日、「デジタルメディアは対メディア支出の半分以上を占めるまでになっているのに、いまだに自主規制、あるいはマーケティング担当者の圧力によって設けられた、ごくわずかな規制の下で運営されている。デジタルプラットフォームは、コンテンツ基準を適切に適用すべき時が来た」と述べた。
P&Gは今後とも、プラットフォーム企業に対して「透明性、報告、規制執行の拡大を求め続けていく」方針だ。
<広告再開の企業も>
一方、仏飲料企業のペルノー・リカール (PA:PERP)は8月にフェイスブックへの広告掲載を再開した。幹部は、ボイコットが「目覚ましになった」とし、その成果に満足していると話した。
英酒造企業・ディアジオ (L:DGE)は、フェイスブックと直接やり取りした結果、広告掲載を再開しつつある。広報担当者は「ある程度の進展があったが、まだ改善の必要性が残っている。(フェイスブックと)協力することにより、より良い成果が得られると考えている」と述べた。
だが、 ボイコット運動を主催した団体は懐疑的な姿勢を崩しておらず、今後とも圧力をかけ続ける構えだ。
主催団体の1つ「Color of Change」のラシャード・ロビンソン代表は、口約束だけでは進展と見なせず、「これらの企業による指針執行のインパクトと規模を見極める」と指摘。「これらの企業が、最も弱い立場にあるユーザーへの責任を放棄し続ける限り、われわれは議会と規制機関に介入を呼び掛け続ける」と述べた。
(Martinne Geller記者)