[上海 29日 ロイター] - 米政府の制裁を受けてサプライチェーン(供給網)の補強を進めている中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が、半導体メーカーなど国内のハイテク企業への出資を強化している。
公開データによると、同社が2019年4月に設立した哈勃科技投資は、昨年8月以降、中国のハイテク企業に17件の出資を行った。
ファーウェイの郭平(グオ・ピン)輪番会長は先週、同社の供給網が米国の「攻撃」にさらされていると批判。「ファーウェイは1企業に過ぎないため、投資と技術を活用して、供給網に参加する提携先の成長を支援する」と述べた。
中国政府も、国内半導体産業の育成に力を入れているが、米国・韓国・台湾の大手半導体メーカーには、まだ追いついていない状況だ。
<半導体分野に照準>
アナリストは、ファーウェイによる投資について、将来的には同社の事業に寄与する可能性があるが、現時点では制裁に伴う供給網の欠損に対応できていないと指摘。かつて急成長していたスマートフォン事業の土台が揺らいでおり、最終的には主力のネットワーク機器事業にも影響が及ぶリスクがあるとの見方を示している。
中国の半導体業界のある投資家は「長い時間がかかるだろう。だが、選択肢は少なく、外部への投資に頼らざるを得ない」と述べた。
ファーウェイは、哈勃の事業についてコメントを控えている。
哈勃の出資先は、大半が半導体分野の国内ベンチャー企業。ファーウェイの供給網に参加している企業はごくわずかだ。
ファーウェイが今年出資した縱慧芯光は2015年の創業。カメラの顔認識術をサポートする垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)センサーを製造している。
縱慧芯光のコメントは取れていないが、同社に出資する投資家によると、縱慧芯光のセンサーは、ファーウェイの多数のスマートフォンに利用されている。
だが、ファーウェイが出資する企業の多くは、まだ事業を開始したばかりの「アーリー・ステージ」の段階にある。
調査会社イコールオーシャンで中国半導体産業を担当するイバン・プラトノフ氏は「出資先の大半はニッチな中小企業だ。得意分野は持っているが、必ずしも国際競争力はない」と述べた。
例えば、哈勃が1月に出資したショルダー・エレクトロニクスは、無線通信用の高周波(RF)フィルターを製造しているが、まだ最先端の第5世代(5G)対応スマートフォンとの互換性を実現できていない。
ショルダー・エレクトロニクスのコメントは取れていない。
また、哈勃が今年出資した3ピークは、無線基地局で利用されるアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)を製造しているが、この市場は米国勢が圧倒的なシェアを握る。
3ピークが上海証券取引所の「科創板(スター・マーケット)」上場に先立ち公表した目論見書によると、昨年の売上高はわずか3億元(4399万ドル)。同社のコメントは取れていない。
哈勃が出資しているのは、ファーウェイの主力事業である通信機器分野だけではない。半導体、原材料、バッテリー技術分野の企業にも複数件の投資を行っており、自動運転車の分野を視野に入れていることがうかがえる。
哈勃は先月下旬には、深センを拠点とする企業オープン・ソース・チャイナにも出資。同社は、米国のソフトウエア開発プラットフォーム「GitHub」に対抗する「Gitee」を運営している。Giteeのコメントはとれていない。
提出文書によると、哈勃は通常、投資先企業の株式の5-10%を取得。出資額は公表されていない。
<投資ペースを加速>
こうした最近の投資からは、ファーウェイが投資の頻度を増やし、投資先を海外から国内に戻していることがわかる。
例えば、ファーウェイは2013年にベルギーを拠点とする光工学(フォトニクス)分野のCalopiaを買収。翌年にはインターネット・オブ・シングス(IoT)分野の英半導体メーカー、Neulも買収した。
ファーウェイの買収先の選定に関与した元社員は「ファーウェイは、研究開発を社内で行いたいという意向が強い。このため、出資や買収は、あくまで最終手段だった。欧米のハイテク企業に投資する傾向が強かったのはこのためだ」と説明した。
(Josh Horwitz記者)
*見出しの脱字を補い再送しました。 2020-10-01T053625Z_1_LYNXMPEG8S0TW_RTROPTP_1_CHINA-HUAWEI-TECH-INVESTMENT.JPG