[15日 ロイター] - 米アルファベット (O:GOOGL)傘下グーグル系の動画投稿サイト「ユーチューブ」は15日、個人や団体を標的とする「Qアノン(QAnon)」などの陰謀論コンテンツについて、指針を厳格化すると発表した。オンラインプラットフォーム各社による陰謀論対策の動きが相次いでいる。
◎Qアノンとは
Qアノンの信奉者らは、トランプ政権の内部に通じると主張する「Q」の匿名投稿に基づくとされる、互いに関連し合う一連の陰謀説を信じている。
陰謀論の中核を成すのは、児童売春を行う陰謀団とトランプ大統領がひそかに闘っているという信条。陰謀団のメンバーには著名な民主党政治家やハリウッドの大物や、米国を影で操る「ディープステート」の同志らが含まれるという説だ。
こうした陰謀論は、首都ワシントンのピザ屋から広がった小児愛者組織が大々的に暗躍しているとするデマ理論「ピザゲート」から派生した。今では宇宙人の到来から、ワクチンの安全性に至るまで、幅広い偽情報を流す包括的な陰謀論に発展した。Qアノンの信奉者は「大覚醒」が「救済」をもたらすためにやってくると唱えている。
◎どのようにオンラインで拡散したか
「Q」の投稿は2017年に「4chan」という掲示板で始まり、現在は「8kun」に投稿されている。これは閉鎖された掲示板「8chan」の看板を掛け替えたもの。
Qアノンはツイッター (N:TWTR)、フェイスブック (O:FB)、インスタグラム、ユーチューブなどで拡散された。
メディア調査によると、陰謀論に関心を示した人々は、ソーシャルメディアのアルゴリズムによる「お薦め」を通じ、さらに多くのQアノンの投稿に導かれることがある。
戦略的対話研究所(ISD)の報告によると、ツイッターとフェイスブック上でQアノンについて対話する人の数は今年急増した。フェイスブックのQアノン関連グループに所属するユーザーは3月に120%増加している。
研究者らによると、ロシア政府を後ろ盾とした組織が陰謀論の拡散に関与しており、その役割は小さいながらも次第に拡大している。
Qアノン信奉者らは8月、児童売買に反対する実際の抗議活動の主催にも関わった。オレゴン州ポートランドでは、警察を支持するデモにも関与した。
Qアノンは連邦議会の下院にも足場を築こうとしている。11月3日の選挙では、Qアノン信奉者の共和党候補が少なくとも1人当選しそうな情勢だ。
◎プラットフォームの対策は
ツイッターは7月、Qアノンのコンテンツとアカウントの推奨をやめると発表し、15万アカウントが影響を受けるとの見通しを示した。また、QアノンのURLを排除するとともに、嫌がらせや脅迫などをしたり規約に違反したりしているQアノン関連のアカウントを恒久的に削除するとした。
フェイスブックは10月、Qアノン対策を一層強化し、Qアノンを「代表する」ページ、グループ、インスタグラム・アカウントをすべて削除すると発表した。Qアノンを称賛したり代表したりする関連広告については、以前から禁止を表明していた。
これらの措置を受け、ユーチューブは、Qアノンやピザゲートなどの陰謀論を使って個人やグループを標的にするコンテンツを禁止すると発表した。こうしたコンテンツは「現実世界の暴動を正当化するのに使われてきた」としている。
ユーチューブはまた、「有害な方法でユーザーに偽情報を与える」特定のQアノン動画の推奨を減らすと表明した。ISDによると、フェイスブックのQアノン関連投稿のうち、約20%はユーチューブにリンクを貼っている。
短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の広報担当者は、Qアノンのコンテンツは「頻繁に偽情報とヘイトスピーチ(憎悪表現)を含んでいる」とし、Qアノンのハッシュタグ数十件を凍結したと説明した。
ソーシャルメディア、レディットの広報はロイターに対し、2018年以来、繰り返し規約に違反してきたQアノンの複数のコミュニティーを削除したと説明した。
電子商取引サイト、Etsy(エッツィ) (O:ETSY)も10月、Qアノンの商品をすべて削除すると発表した。
同業のアマゾン・ドット・コム (O:AMZN)とイーベイ (O:EBAY)を見ると、本やフェイスマスク、Tシャツ、帽子など、Qアノンブランドの商品が販売されている。ロイターは両社に対し、これらの商品に具体的な対策を講じるかどうか質問したが、現時点では回答が得られていない。