[ワシントン 20日 ロイター] - 米司法省が米アルファベット (O:GOOGL)傘下グーグルを独占禁止法(反トラスト法)違反で提訴した。ネット検索市場と広告市場で圧倒的な市場支配力を持つグーグルが不公正な対応をしたのか、長い法廷闘争が続くと見込まれる。
主要な問題点をまとめた。
<司法省の主張>
司法省の申し立てによると、グーグルはネット検索市場と、2種類の広告市場、つまり検索広告とテキスト広告で独占を維持し、反トラスト法に違反している。グーグルの米検索市場でのシェアは約90%。
司法省は論拠として、グーグルがアップル (O:AAPL)やサムスン (KS:005930)などスマートフォンメーカーに数十億ドルを支払い、スマホにグーグルの検索機能を初期搭載させていると指摘。その結果、中小の検索サービスがアルゴリズムの改善に必要な市場規模を得られず、成長できないでいるとしている。
<司法省の改善要求>
司法省には幅広い改善措置を求める余地がある。20日には「あらゆる選択肢があり得る」とし、検索部門と広告部門を分離させる可能性を排除しなかった。
「反競争的行為によるあらゆる被害」の補償に必要な「構造的な軽減措置」を求めるとしている。反トラスト法を巡る問題では「構造的な軽減救済」は通常、資産売却を意味する。
司法省は裁判所に対し、グーグルに反競争的な行為を中止させ、政府のコストも負担させる命令も求めた。
<ほかのグーグル批判>
グーグルはこれまでにも、検索機能を通じて動画投稿サイト「ユーチューブ」など自社製品を優遇していると批判されてきた。
最近の例では、米NBCの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の動画を検索すると、NBCよりも先にユーチューブの複数動画を検索結果として表示。飲食店検索・評価サイトのイェルプなどは、特定のサービス分野では自分たちが消費者の検索支援でグーグルより優れているにもかかわらず、グーグルの検索結果では自分たちのサイトの推奨順位が低いことが多く、閲覧数が伸びないと主張してきた。
より広い広告に関連する批判もある。グーグルは広告市場で、広告主とニュース配信業者や他のウェブサイトなどを結びつける事業で優位にある。グーグルが取引収入をきちんと開示していないことや、セット販売で小規模なライバルを不利にしているなどとも批判されてきた。
<グーグルの反論>
グーグルは司法省の主張に対して20日、「重大な欠陥」があると反論した。司法省が勝訴すれば、ユーザーが優れた検索ツールや手頃な価格のスマートフォンを入手するのが困難になると訴えている。
検索サービス市場については、ユーザーにはツイッターやアマゾンなどもあり、他の情報源にアクセスが可能だとした。消費者は検索ですぐに答えを得られるためにグーグルを利用しているのであって、これに応えるために同社は検索のシステム化で新たな開発を進めているとも強調した。
広告市場では、オラクル (N:ORCL)やベライゾン・コミュニケーションズ (N:VZ)など多くの大手企業との競争があると主張。オンライン広告料金は、この10年で下落し続けているとした。
グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」については、グーグルのスマホのシステムを用いるスマホメーカーには、グーグル製アプリの搭載は義務付けていないと指摘。競合他社のアプリの初期搭載も可能だと主張している。
<州司法省の調査>
多数の州司法長官がグーグルを調査している。今回も11州が司法省の訴訟に加わった。テキサス州が主導するグループは、広告市場でのグーグルの慣行に注目し、他の州は検索サービスとアンドロイドを問題視している。こうした動きが別の訴訟につながる可能性もある。
<裁判の期間と控訴の可能性>
訴訟が長引くかどうかは、グーグルの意向次第だ。専門家によると、審理が始められるとしても、少なくとも半年から9カ月はかかる。判決は審理終了から数カ月後の可能性が高い。その後に上訴に持ち込む可能性も大きい。
グーグルは20日、こうした訴訟では通常、審理開始まで12カ月から18カ月かかるとした。
<政治の影響>
複数のハイテク業界のロビイスト団体が、今回の訴訟は政治的な動機に基づくと指摘している。コンピューター通信産業協会は声明で「大統領選直前に駆け込みで提訴された。今回の選挙戦では、現政権は自分たちに有利になるように振る舞うよう、ハイテク企業に強く圧力をかけてきた」と表明した。
トランプ政権は、シリコンバレー系の数社がソーシャルメディアの取り扱いなどで、国内の保守派勢力の意見表明を不当に黙殺していると激しく非難してきた。共和党議員の多くも最近の反トラスト法の公聴会では、そうした「偏向問題」を取り上げている。