[東京 1日 ロイター] - Zホールディングス(ZHD)の川邊健太郎社長・共同最高経営責任者(Co-CEO)は1日の経営戦略説明会で、2023年度に売り上げで2兆円、営業利益で2250億円を目指すと述べた。広告・マーケティングやeコマース(電子商取引)でLINEとの相乗効果を見込む。ZHDとLINEは同日、経営統合を完了した。
川邊社長は「売上収益を3年で数千億円上げないといけないのはチャレンジング」としつつ、ZHDとLINEが強みを持つ広告・マーケティング分野では「相乗効果が出やすい」と指摘、eコマースでは相互送客による拡大を図る考えを示した。
川邊社長は、ZHDとLINEの統合による今後の展開について「キーテクノロジーはAI。全てのサービスにAIを実装する」と述べた。5年間で5000億円を投資し、AI人材も5年で5000人増員する方針。
海外展開に関しては、会見に同席した出澤剛Co-CEOが、LINEが台湾やタイ、インドネシアなどアジアで展開していると説明し「これらを起点に日本の事例を展開し、海外の成功事例も国内に取り入れていく」と述べた。ソフトバンク、ソフトバンク・ビジョン・ファンド、韓国NAVERとも連携を強めて「グループのノウハウ、ネットワークを存分に生かして海外展開を強化する」(出澤氏)とした。
フィンテック事業は「メディアやコマースに次ぐ第3の事業の柱にする」(川邊社長)とした。各領域でマルチパートナー戦略を取る。例えば、ジャパンネット銀行では三井住友フィナンシャルグループと、LINEバンク設立準備会社はみずほフィナンシャルグループと連携していく。一方、国内のQRバーコード決済は、22年4月にLINEペイをペイペイに統合することで協議を開始したことを明らかにした。グローバルではLINEペイを継続する。
重複するサービスの統廃合については継続して議論していく。
川邊社長は経営統合方針を発表した19年の会見で、米中のIT大手に次ぐ「第3極」を目指す考えを示していた。IT業界では、GAFA(アマゾン・ドット・コム、アップル、フェイスブック、アルファベット傘下グーグル)やBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)といった米中の強豪がひしめき、時価総額でZHDと開きがある。
川邊社長は同日の説明会で「コロナ禍でGAFAやBATとの体力差はむしろ開いた」と述べる一方、日本に根ざした対応力を高めたり、グループの総合力を生かして対抗していく考えを示した。親会社も含めると、ネット検索にeコマース、メッセンジャー、金融、携帯電話などとサービスは多岐にわたるとし「守備範囲の広さはGAFAより優れている」(川邊社長)と強調した。
生活に身近なサービスをひとつのアプリでシームレスに使えるようにする「スーパーアプリ」としては、LINEとペイペイ、ヤフーがそれぞれ、コミュニケーション、決済、情報取得と特徴のあるスーパーアプリだとし「それぞれのサービス特性を生かしながら発展していく」(川邊社長)とした。
ZHDとLINEの経営統合では、LINEが社名変更した「Aホールディングス」がZHD株の65.3%を保有する。ZHDの傘下に、ヤフーとLINEの事業を引き継ぐ会社がぶら下がる。AHD株はZHD親会社のソフトバンクとLINE親会社の韓国NAVERが50%ずつ保有する。
当初は20年10月の統合完了を目指したが、各国当局による競争法などの手続きが一部で遅れ、統合時期を延期していた。
(平田紀之)