[エルパソ(米テキサス州) 7日 ロイター] - トランプ米大統領は7日、週末に相次いで銃乱射事件が起きたテキサス州とオハイオ州を訪問した。しかし訪問先では、反移民や人種差別的な発言を繰り返して緊張を高めているとしてトランプ氏を非難する抗議活動が行われた。
トランプ氏は、移民に反対する内容の文書をインターネットに投稿した男が銃を乱射して22人が死亡したテキサス州エルパソの病院を訪問し、負傷者を見舞った。
付近の公園には「トランプは人種差別主義者だ」、「憎悪より愛を」などと書かれたプラカードを掲げた数百人が集まり、トランプ氏の訪問に抗議した。
トランプ氏はこれより先、オハイオ州デートンでも負傷者が治療を受けている病院を訪問した。
病院周辺やデートン中心部では、「憎悪は歓迎しない」などと書かれたプラカードを掲げたグループが「なんとかしろ!」と叫び抗議した。
トランプ氏はツイッターに「温かくすばらしい訪問だった」と投稿し、「強い熱意や愛情すら」感じたと述べた。
大統領はまた、エルパソの救命救急センターも訪問し、3日の乱射事件に対応した職員らに「あなた方は素晴らしい仕事をした」と労いの言葉をかけた。
4日未明にデートンで起きた事件でも9人の死亡が確認されており、相次ぐ乱射事件を受け、米国では銃規制を巡る議論が再び高まっている。
トランプ氏は出発前にホワイトハウスで、銃購入者の身元審査を厳格化したいとの考えを示した。また、精神障害者に対する銃保有禁止を徹底したいとも発言。これら2つの措置については議会の支持が得られるとの見通しを明らかにした。
一方で、民主党が目指すアサルト・ライフル(突撃銃)禁止は「現時点で政治的な意欲はない」と述べ、議会通過に否定的な見方を示した。「銃購入者の経歴調査については大いに意欲がある」とした。
トランプ氏のデートン訪問に同行した同市のナン・ウェイリー市長とオハイオ州選出のシェロッド・ブラウン上院議員(ともに民主党)は記者団に対し、銃購入者の経歴調査強化を義務付ける法案について、上院で夏季休会を中断して審議するよう、トランプ氏から共和党上院トップのマコネル院内総務に要請して欲しいと訴えたことを明らかにした。同法案は既に下院では可決されている。
ブラウン氏は、トランプ氏に同法案への署名を約束するよう求めたが、「大統領は、われわれは物事を成し遂げるだろう、とだけ述べた」という。
当局は、ヒスパニック(中南米系)が人口の大半を占めるエルパソの事件を人種差別に絡むヘイトクライム(憎悪犯罪)や国内テロとして捜査していると明らかにしている。米連邦捜査局(FBI)は、デートンの事件の容疑者もまた、暴力的なイデオロギーに関心があったとしている。
トランプ氏は5日、乱射事件を受けて、インターネットの監視強化やメンタルヘルス問題への取り組みの見直し、重罪に対する死刑求刑などを提案。民主党は、トランプ氏が精神障害やソーシャルメディアの影響に焦点を当てることで銃規制強化に消極的な自身の姿勢を隠していると批判している。
民主党の大統領候補指名を目指すバイデン前副大統領は7日、アイオワ州で演説し、トランプ大統領が白人至上主義を助長させていると非難。「大統領は毒舌を吐き、政治戦略としての憎悪、人種差別主義、分断を悪びれもせずに公言してきた」と強調した。
*内容を追加しました。