[ローマ/ミラノ 29日 ロイター] - イタリア与党左派の「五つ星運動」と野党中道左派の民主党(PD)がコンテ首相の続投と連立政権の樹立で一致したことを受け、マッタレッラ大統領は29日、コンテ氏と会談し組閣を指示した。これにより先の連立崩壊に端を発した政治危機はひとまず収束に向かう運びとなった。
五つ星と民主党は28日、連立政権の樹立に向け合意に到達。五つ星のディマイオ党首と民主党のジンガレッティ書記長(党首)がコンテ首相の続投で一致した。
大統領府から出てきたコンテ氏は「数日以内に大統領のもとに戻り、閣僚名簿を提出する」と述べ、大統領の組閣命令を受け入れたことを確認。その上で2020年予算の編成作業が優先課題だとし、「付加価値税(VAT)引き上げ回避や預金保護、先行きの着実な経済成長に向け今すぐ予算案の策定に着手しなければならない」と語った。
VATは来年1月1日から引き上げられることになっており、増税を回避するには代わりとなる230億ユーロ(260億ドル)の財源を確保する必要がある。
五つ星と民主党はなお政策面で一致しておらず、今後の政策や内閣人事を巡って調整が難航する可能性もある。また五つ星は民主党との連立を巡ってインターネット投票の実施を公約に掲げているが、民主党との連立に反対する五つ星支持者は多く、信任を得られるかは微妙な情勢だ。ネット投票の日程は現時点で未定だが、今後数日中に行われるという。
ウィンポールが25日行った世論調査によると、民主党との連立を支持する五つ星支持者の割合は43%と半数を割り込んでいるものの、以前からは大幅に伸びている。五つ星支持者の多くは民主党を既存の腐敗政党と見なしており、五つ星はその打倒のために誕生したと考えている。
民主党のジンガレッティ党首は、低迷する経済の活性化が新政権の優先課題だと強調。「政府はインフラ整備や雇用創出に向けた投資など、国の再生に向け迅速に対応しなければならない」とした。
地元紙ソレ24オレが29日報じた連立政権の初期段階の政策綱領草稿によると、両党は「社会の結束を強化」するため、2020年の財政赤字について、欧州連合(EU)に柔軟な対応を求める見通し。
前日の市場では、イタリア10年国債利回り (IT10YT=RR)が過去最低を更新。新政権が間もなく樹立し、総選挙が回避されるとの見方が広がった。
この日の10年債利回りも過去最低付近。ドイツとイタリアの10年債利回り格差 (DE10IT10=RR)は166ベーシスポイント(bp)と、昨年5月以来の低水準となっている。
29日のイタリア10年物国債入札では落札利回りが0.96%と7月の前回債(1.56%)から低下し、過去最低となった。
*内容を追加しました。