[ロンドン/ワシントン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、世界貿易機関(WTO)が認めた欧州連合(EU)に対する報復関税について「素晴らしい勝利だ」と胸をはった。一方、EUは即座に反発し、欧州製造業者からは懸念の声が相次いだ。米中貿易摩擦の先行きが見通せない中、米国と欧州の対立が関税合戦に発展し、世界経済への新たな重しとなる恐れがある。
トランプ大統領はWTOが米国の主張を認めたことについて、EUは「長年、関税や関税障壁などによって米国を不当に扱ってきた。素晴らしい勝利だ!」と自賛した。
米ホワイトハウスのナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)は3日、フォックスニュースとのインタビューで、米国の報復関税はWTOが承認したものだと主張し、EUが報復措置を取ることをけん制した。
一方、EUは対抗の構えを見せる。フランスのルメール経済・財務相は「フランスやEUが差し伸べる手を米政権が拒否するのであれば、制裁で対抗する用意がある」と強調した。
米通商代表部(USTR)によると、報復関税は航空機が10%、他の工業品やワインやチーズなどの農産品には25%を上乗せする。エアバスが仏英独スペインの4カ国による共同事業体(コンソーシアム)であることを踏まえ、この4カ国で生産される大型エアバス機が対象に含まれるが、エアバスの米アラバマ工場や米ボーイング (N:BA)に供給されるEU製の航空部品には適用されない。
対象品目は数百に上り、仏英独スペインの4カ国が主な標的となっている。スペイン産オリーブ、英国産ウール商品やウイスキー、ドイツ産コーヒー、フランス産ワインなどだ。チーズはほぼ全EU加盟国が追加関税の対象となるが、欧州産チョコレートやイタリア産ワインおよびオリーブ油は対象外となった。[nL3N26O03X]
英スコッチウイスキー協会は、報復関税によって同業界の雇用や投資がリスクにさらされると表明。「航空機への政府補助金を巡って争われているにもかかわらず、われわれの産業にも打撃が及んでいる」と批判した。米国はスコッチウイスキーの最大市場であり、昨年の輸出は10億ポンド(12億3000万ドル)相当に上る。
スペインのワイン生産者協会も、米国で販売されるスペイン産ワインの価格が上昇するとし、「われわれの競争力に影響することになる」と述べた。
ドイツ機械装置産業連盟(VDMA)は関税を巡る「卓球の試合」のようだとし、欧州委員会が米国との対立を緩和しなかったことに失望を表明した。
世界最大の乳製品メーカー、仏ラクタリス・グループの広報担当は「乳製品が最大の打撃を被る見通しで、関税導入の措置延期に向けて尽力する」とした。
ただ、米政府が今回示した報復関税の規模は米政府が当初検討していた250億ドル相当から大幅に減額された。当初は航空機部品のほか、ヘリコプター、海鮮物、高級品なども関税の対象になるとされていた。
関係筋によると、EU側を交渉の席に向かわせるために、USTRが意図的にWTOが承認した上限額を下回る規模に設定したという。
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