[ソウル 23日 ロイター] - 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、同国東海岸沿いの景勝地・金剛山にある韓国の施設は撤去する必要があるとした上で、北朝鮮のやり方によって近代的なものに建て替えるべきだと述べた。朝鮮中央通信(KCNA)が23日伝えた。南北関係の冷え込みがあらためて鮮明になった。
金剛山観光事業は、開城工業団地とともに、南北の主要な経済プロジェクトであり、南北間の協力の象徴とされている。
金委員長は、金剛山を視察した際、金剛山を南北関係の象徴とみなすのは「誤った考え」と主張。金剛山は北朝鮮の国土であり、ここでの観光を韓国が仕切るべきではないとの考えを示した。
委員長は「金剛山を世界水準の観光地にした後で、韓国の同胞たちがここを訪問するのは、歓迎する」と語った。
韓国統一省の報道官は、北朝鮮の意向を見極めようとしているとコメント。「北朝鮮から要請があれば、韓国国民の不動産所有権や南北間合意の趣旨を守り、金剛山観光の再開を確保するという観点から、いつでも協議に応じる用意がある」と述べた。
韓国国民による金剛山観光は、1998年には海路による訪問が解禁され、2003年からは陸路による訪問が可能になった。韓国企業では現代峨山やアナンティなどが金剛山の観光事業を手掛けてきた。しかし、軍事区域に入り込んだ韓国人観光客を北朝鮮の兵士が射殺する事件が発生したことを受けて、韓国政府は2008年に金剛山への観光ツアーを停止。韓国資本の施設は現在も金剛山に残っているが、北朝鮮に対する国際的な制裁を背景に、韓国からの観光ツアーは再開されていない。
現代峨山は、金委員長の発言に関する報道に困惑しているが、「冷静に対応する」考えだと表明した。
現代峨山の過半数株式を保有する現代エレベーター (KS:017800)の株価は6.6%安となり、2008年に営業停止となるまで金剛山にゴルフと温泉のリゾート施設を運営していたアナンティ (KQ:025980)は7%安となった。
KCNAによると、金委員長は、金剛山開発を他者に依存する「前任者たちの間違った政策」を批判。金剛山は、元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区も含むより広範囲な観光地の一部として、開発していくべきだと語った。
観光業は、金委員長が掲げる「自立的な」経済成長政策の要であり、国際的な制裁の対象になっていない産業の1つ。
KCNAによると、金委員長は、施設撤去に向けて関連する韓国当局と合意を模索する必要があると述べた。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は近年、金剛山観光再開の可能性に何度も言及している。文大統領側の発表によると、同大統領と金委員長は2018年9月の平壌での会談で、「環境が整い次第」金剛山観光と開城工業団地を正常化することで合意した。
*内容を追加しました。