[カルガリー(加アルバータ州) 22日 ロイター] - カナダのエネルギー産業にとって、21日の下院議会選挙の結果は、最悪のシナリオが現実となった形だ。トルドー首相率いる中道左派の与党・自由党は一定議席を確保したが単独での過半数議席は獲得できなかった。今後は、原油パイプライン新設に反対する左派野党との連立が必要になり、新民主党(NDP)、緑の党などとの連携が不可欠となる様相だ。
カナダの原油埋蔵量は世界3位で、西部アルバータ州全体にオイルサンド(油砂)が蓄積。エネルギー部門の収入は、国内総生産(GDP)の11%を占める。だがNDPと緑の党は、このオイルサンド開発にかかる費用を気候変動対策に向けるとの姿勢を明確にしている。
原油を商品とする投資信託を手掛けるオースピス・キャピタル・ファンドのピッカリング最高経営責任者(CEO)は「間違いなく最悪の結果だ」と述べ「自由党は少数派となった。エネルギー方針が完全に異なるNDPと緑の党の支配力が強まるだろう」と指摘した。
カナダのエネルギー部門が最も懸念しているのは、長期にわたり遅延している「トランス・マウンテン石油パイプライン拡張計画(TMX)」。アルバータ州のオイルサンド生産帯とブリティッシュコロンビア州の太平洋沿岸港をつなぐもので、完成後の輸送能力は現在の3倍になる。トルドー政権は昨年、同事業を45億カナダドル(43億ドル)で買収。先月から工事は始まっているが、拡張をめぐって訴訟にも発展している。
一方、カナダ西部の原油生産帯は、5年間に及ぶ原油安で痛手を受けている。14年は810億カナダドルだった資本支出は半減し、今年は370億カナダドルにとどまっている。