[ストックホルム 19日 ロイター] - スウェーデン中銀は、政策金利のレポレートを25ベーシスポイント(bp)引き上げゼロ%とすることを決定した。経済が減速し、世界的な不透明感も強い中でも、5年にわたったマイナス金利に終止符を打った。
中銀は声明で「10月の金融政策会合以降の状況は、おおむね中銀の予想に沿って推移した」とし「10月時点の予想通り、レポレートをマイナス0.25%から0%に引き上げることを決めた」と説明した。
今回の利上げは予想通りだった。
イングベス総裁は、マイナス金利政策は景気押し上げ効果があったと表明。ただ「マイナス金利政策が極めて長期にわたり導入された場合、経済に何が起こるかはまったく別の問題となる」と述べた。
マイナス金利政策から脱却した中銀は、スウェーデン中銀が初めて。ユーロ圏、日本、デンマーク、スイス、ハンガリーではマイナス金利政策が続いている。
スウェーデン中銀は「インフレ率が今後引き続き目標付近で推移する条件が整っていると判断した」と説明。
ヤンソン副総裁とブレマン副総裁は利上げの先送りを主張した。
中銀は2021年末まで政策金利を据え置くとの見通しを維持した。
ロイター調査では、アナリスト14人中13人が今回の利上げを予想していた。
中銀の決定を受け、スウェーデンクローナ (EURSEK=)は、対ユーロで値上がりした。ただその後は上げ幅を縮小し、ほぼ横ばいとなった。
世界最古の中銀であるスウェーデン中銀は2015年に政策金利をマイナス0.10%に引き下げた。ユーロ圏の危機で物価が一段と低迷し、日本型のデフレスパイラルに陥るとの懸念が背景だった。
中銀はその後も利下げを進め、2016年には政策金利がマイナス0.50%に達した。こうした超金融緩和政策を受けて、クローナ安が進行。輸入物価が上がり、輸出依存度の高い同国経済を押し上げる要因となった。
同国経済は数年にわたって高成長を記録したが、今年に入り景気は鈍化しており、今回のタイミングでの利上げを疑問視する声も多い。
インフレ率は目標を下回っており、2%付近での安定は今後数年間、予想されていない。
ただ、中銀はマイナス金利の副作用を懸念している。預金者が悪影響を受けているほか、不動産価格が急騰し、家計・企業の債務が増えている。予想外のショックが発生すれば金融市場に動揺が走るリスクがある。
資金調達コストの低下で「ゾンビ」企業も生きながらえており、経済全体の生産性も低下している。
スウェーデン中銀はマイナス金利政策からの脱却を目指してきたが、英国の欧州連合(EU)離脱や米中貿易摩擦が悪い方向に向かえば、再びマイナス金利の導入を迫られる可能性もある。
イングベス総裁は 「ゼロ%は現時点で最適な金利水準ということで、金利の下限ではない」とし、「必要に迫られば一定の期間、金利をマイナス圏にすることはできる。ただこれは仮定の話で、中銀の経済展望を踏まえ、こうしたことは想定されていない」と述べた。
欧州ではこの日、ノルウェー中銀が政策金利を1.50%に据え置くことを決定。イングランド銀行(英中央銀行)も政策金利を0.75%に据え置くことを決定した。
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