[北京 8日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染による死者は中国本土で700人を超え、2002─03年に世界的に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回る勢いとなっている。
専門家はマスクや手袋の不足を警告。日本の横浜港沖に停泊中のクルーズ船でも新たな感染が確認された。
中国の保健当局者によると、震源地の武漢市がある湖北省では2日連続で新たな感染例が減っていたが、7日に再び増加に転じた。感染拡大のピークを予測するのは難しい状況だ。
中国本土での死者は7日時点で前日から86人増え、722人に達した。2002年11月─03年7月に流行したSARSによる世界全体の死者数(774人)を上回る勢いで増えている。
中国本土以外では27カ国・地域で約330人の感染が確認されているが、これまでのところ死者は香港とフィリピンにおける計2人にとどまっている。
SARSの場合、感染者数は8098人で、今回の新型ウイルスと比べて感染力はかなり弱いものの、致死率が高いことが分かる。
豪メルボルンのモナッシュ大学の伝染病専門家であるアレン・チェン教授は、ロイターに対し「今回の新型コロナウイルスの致死率がどの程度になるかは判断し難い」と指摘。「およそ2%のようだが、感染した多くの人がまだ検査を受けていないとみられる。実際の致死率が分かるまでには時間がかかるだろう」と述べた。
湖北省の当局者は8日、同省の死者が81人増えたと明らかにした。このうち武漢市の死者は67人。
本土全体ではすでに回復した2050人と死亡者を除き、感染者数は3万1774人に上っている。
<感染者の陽性反応5割以下>
中国医学科学院の王辰院長によると、すべての感染者が検査で陽性になるとは限らないという。
王院長は5日に放送された国営テレビのインタビューで、「新型コロナウイルスの実際の感染者が検査で陽性反応を示す比率は30─50%」と語った。このインタビューは5日の放送以降、ソーシャルメディアで拡散している。
湖北省は検査をより迅速、正確なものにするため、CTスキャンを使い始めた。
<マスクや手袋が不足>
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は7日、マスクや手袋などの防護装備が世界的に不足していると警告を発した。
ジュネーブで会見したアダノム事務局長は「供給が不足し、需要が高まれば、より高い価格で転売することを目的とした買いだめのような悪習が出かねない」と述べ、各国に連携を呼び掛けた。[nL4N2A74AU]
米国務省当局者によると、同国はマスクや人工呼吸器などを含む医療用品およそ17.8トンを中国に送った。
日本の厚生労働省は8日、横浜港沖に停泊中の「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに3人の感染が確認されたと発表した。船内の感染者は計64人となった。
WHOの専門家、マイク・ライアン氏は欧米諸国でウイルスと関連付けてアジア人を差別する動きが報じられていることについて「全く容認できない。そうした行動は止める必要がある」と批判した。
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