[クアラルンプール 16日 ロイター] - マレーシアの首都クアラルンプールにある小さな工場で、チャーハンやチキンビリヤニ(まぜご飯)などの即席食品を何千食も生産する準備が進んでいる。今年最大のスポーツイベント、東京五輪・パラリンピック「東京2020」に向けて出荷する予定だ。
東京2020では大勢のイスラム教徒が日本を訪れると見込まれ、同教徒が多数派を占めるマレーシアの食品会社にとって、イスラム戒律が許す食品などの項目「ハラル」に対応した商品を売り込む大きな機会となりそうだ。
「わが社にとって大舞台、大きなチャンスだ」と語るのは、クアラルンプールの食品会社マイシェフを運営するアーマド・フサイニ・ハサン氏。「1度限りで退出するつもりはない。(市場に)進出し、長期間とどまり続ける必要がある」
マレーシアは五輪を足掛かりとし、今年は食品と化粧品を含むハラル輸出品を約2割増やして120億ドルとしたい意向。同国は18年、日本向けに6億0400万ドル相当のハラル商品を輸出しており、うち90%が食品と食品原材料だった。
マレーシアは東京2020に向け、日本政府とハラルについての協力合意を結んだ唯一の国だ。
マイシェフは今年、売上高を前年比3倍の450万リンギット(100万ドル)とする狙い。アーマド・フサイニ氏によると、イオン (T:8267)との間で、即席ハラル食品・スナックの共同開発について交渉中だ。
マレーシアはハラル商品の貿易で、非イスラム国の米国、中国、ブラジルなどの後塵を拝している。アイルランド・ダブリンのデータ会社リサーチ・アンド・マーケッツによると、世界のハラル市場は23年までに2兆6000億ドルと、17年からほぼ倍増する見通し。
<マレーシア・ストリート2020>
マレーシア政府は、東京2020前後にハラル食品・商品を最大3億ドル相当販売する野心的な目標を掲げている。東京に「マレーシア・ストリート2020」として会場を開設し、物品販売や、同国企業と日本のバイヤー・流通企業を引き合わせる場所とする予定だ。
在マレーシア日本大使館の中島英登・参事官(経済担当)は「マレーシアの関係者からわれわれが学ぶことは多く、それと引き換えにマレーシア企業側は事業を拡大する機会が増える」と説明した。
世界最多のイスラム教徒人口を誇る東南アジア諸国からの訪日客は、ビザ(査証)発給の緩和によりここ数年で急増した。
日本は今年の訪日外国人を過去最多の4000万人に増やすとの目標を掲げている。マレーシアの推計ではそのうち800万人がイスラム教徒だ。
日本にマレーシアのハラル商品を売り込む企業4社の1社に選ばれたHQCコマースにとって、東京五輪はより大きな事業に向けた足掛かりと言える。
シャフリル・ハムザー最高経営責任者(CEO)は「五輪期間に需要が最高に達するのは分かっている。だからわが社にとってマレーシアの商品を売り込むチャンスだ」と話した。