[ワシントン/ミネアポリス 1日 ロイター] - 米ホワイトハウスの近くで1日、平和的なデモ隊に警察が催涙ガスとゴム弾を発射した。ほぼ同じ頃にはトランプ大統領がホワイトハウスのローズガーデンで演説していた。
ロイターのJonathan Ernst写真記者によると、ホワイトハウスから道路を隔てたラファイエットパークでは馬に乗った警官を含む警察当局がデモ参加者の排除に乗り出した。
一方、ほぼ同時刻にはトランプ大統領が首都ワシントンでの暴力を食い止めるため数千人の重武装兵や警察を動員するとし、市長や知事が街頭の統制を取り戻せなければその他都市でも同様の措置を取ると表明した。
大統領はホワイトハウスのローズガーデンで「市長や知事は暴力が鎮圧されるまで圧倒的な法執行機関のプレゼンスを築かなければならない」と指摘。「市や州が住民の生命や財産を守るのに必要な行動を取らなければ私が米軍を動員し、問題を迅速に解決する」と述べた。
前夜に起きた暴力や略奪、放火を「不名誉」な行為だと非難し、ワシントンで午後7時から外出禁止令を厳重に執行すると語った。
また、「暴力や略奪、破壊、放火を阻止し、憲法修正第2条で保障された権利を含め、法律を順守する米国民の権利を守るため」、民生や軍隊の資源を総動員すると述べ、国民が武器を保持する権利を保障する合衆国憲法修正第2条に言及した。
「平和的なデモ隊の正義の声が、怒った群衆によって打ち消されるのを容認できない」とも述べた。
<トランプ氏、各州知事に強硬対応を要求>
トランプ大統領は1日、全米で激化している黒人男性暴行死を巡る抗議デモに対する各州知事の対応を批判し、より強硬な姿勢で臨むべきとの考えを示した。一方、複数の都市では略奪や暴力行為を抑えるため夜間外出禁止令が延長された。
米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官から首を圧迫され死亡した事件への抗議活動は全米数十の都市に拡大している。日中はおおむね平和的に行われるが、夜になると暴徒化する傾向にある。
ロイターなどメディア各社が入手した記録によると、トランプ大統領は州知事らとの電話会談で「知事は威圧する必要がある。そうしなければ、時間を無駄にするだけだ。抗議者に圧倒され、愚か者と見られるのが落ちだ」と語り、デモ参加者への対応や一斉逮捕のほか、国旗を燃やす行為を禁止する条例の制定などを求めた。
また、連邦政府として暴力を「非常に強く」取り締まると述べた。
さらに、暴徒化したデモ隊による暴力は「極左勢力」によるものと批判したが、証拠は示さなかった。
複数メディアによると、イリノイ州のプリツカー知事(民主党)はトランプ大統領に対し、トランプ氏の発言が不安定な状況を悪化させているとの認識を示したという。
外出禁止令は全米数十の都市で敷かれ、公民権運動を主導したキング牧師が暗殺された1968年以来の規模となっている。23の州と首都ワシントンでは州兵が動員されている。
ある国防総省高官が匿名を条件に語ったところによると、首都ワシントンの1200人の州兵全てが動員されており、5つの州では追加で600─800人の州兵を動員させる計画で、夜までに配備に就くという。別の高官は、州兵の一部は殺傷兵器を装備していると明らかにした。
州兵以外にも、首都ワシントン地域では現役兵も待機しているという。現役兵の動員は大統領が決定する必要があるという。
ワシントンとミネソタ州、ロサンゼルスは外出禁止令を延長した。ワシントンでは、ホワイトハウス近くの歴代大統領ゆかりの教会も若干の被害にあった。
ケンタッキー州ルイビルでは、前日夜からのデモの強制排除に乗り出した警察と州兵が群衆に発砲し、1人が死亡。シカゴ市長は略奪に関する警察への通報が1万件を超えたと明らかにした。
米司法省高官は、同省が連邦刑務所局に対し、マイアミとワシントンに暴動鎮圧チームを派遣するよう指示したことを明らかにした。
フロイドさんの事件を巡り、独立検視官らは1日、遺族の要請を受けて行った検視の結果、死因は「窒息」で、殺人により死亡したと断定した。また死亡原因となるような持病も見られなかったとした。
第3級殺人と故殺の容疑で訴追された元警官のデレク・ショビン容疑者は保釈保証金50万ドルを支払って保釈され、今月8日に出廷する見通しだ。
米国で警察による人種差別に対する抗議活動が起きるのはこれが初めてではない。フロイドさんの死は、政治や人種による米国社会の分断をあらためて浮き彫りにした。
デモが行われている多くの都市は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた外出制限が緩和され、経済活動の再開に乗り出したばかりだ。全米で10万4000人以上が死亡し、4000万人超の失業者を出した新型コロナのパンデミック(世界的大流行)では、アフリカ系米国人が感染者に占める割合が高くなっている。
一連のデモに対するトランプ大統領の対応を巡っては、国の結束を呼び掛け根本的な問題の解決を目指す代わりに衝突や人種間の対立をあおっているとの批判が出ている。
11月の米大統領選に向け民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領は1日、デラウェア州で黒人指導者と面会し、自身が大統領に就任すれば100日以内に警察の監督機関を新設する考えを示した。
*内容を追加しました。