[トロント 3日 ロイター] - 米国が世界反ドーピング機関(WADA)への資金拠出を停止した場合、同国のアスリートが五輪などの国際主要大会に出場できなくなる可能性が浮上している。WADAがロイターの取材で明かした。
WADAのウィトルド・バンカ委員長はロイターに対し、「米国が資金拠出を取りやめた場合、米国アスリートに対し、より深刻で広範囲な影響が及ぶ可能性がある。米国政府の脅迫に驚いた世界各国の政府から連絡を受けている」と語り、米国がWADAの規則に準拠していないと判断された場合には国際大会参加を禁止する罰則を設けるよう各国から求められているとした。
一方、米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート委員長は、WADAの脅しは空虚で違法だと反論。ロイターに対し、「WADAの失敗したガバナンスモデルを巡って一国のアスリートを脅すというのは、非常に驚くべきことであり、失望している。WADAは強い圧力を受けて揺れているが、米国選手を違法に脅迫するのは恥ずべきことだ」と主張した。
そして「彼らは組織を修正し、世界が望んでいるもの、つまり独立した強力なWADAになるために時間を費やすべきだ。ルールを守るためにあらゆることを行っている重要なパートナーを攻撃する一方で、ロシアのような組織的なドーピングをする国家から目をそらすのは間違っている。その偽善は信じられないものだ」と語り、組織改革を求めた。
米国では、麻薬取締政策局(ONDCP)がWADAの早急な改革実施を求める報告書を議会に提出し、WADAから明確な態度が示されない場合は資金拠出を保留すべきとの提案がなされた。
米国はWADAの最大の資金拠出国であり、2020年予算では3740万ドル(約39億7000万円)のうち270万ドルを拠出している。