[ワシントン/ボストン 17日 ロイター] - 専門家によると、トランプ米大統領が先週出した、中国軍が所有または支配していると見なされる中国企業への投資を禁じる大統領令が当該企業に与える影響はさほど深刻ではない公算が大きい。
範囲が限定されていること、次のバイデン政権の対中政策が不透明なこと、米国からの投資がすでに少なくなっていることが理由という。
12日に出された大統領令は、中国軍の支援を受けていると米国防総省が今年指定した中国企業31社の株式を米国の投資会社や年金基金が購入しないようにすることが狙い。
これらの企業には、国有通信大手の中国電信(チャイナテレコム) (HK:0728)や中国聯通(チャイナユニコム) (HK:0762)、中国移動(チャイナモバイル) (HK:0941)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン) (SZ:002415)などが含まれる。
投資家は対象企業への深刻な打撃を懸念し、これらの株価は下落した。
だが、この大統領令にはさまざまな制限がかけられている。規制を回避するためのライセンスを付与する可能性を残してあるほか、資産凍結や米国との取引の全面禁止などのより厳格な措置には踏み込んでいない。
また、来年1月11日の大統領令発効後も、すでに保有している株式の売却や継続保有は認められる。
元米財務省当局者で弁護士のMatthew Tuchband氏は「大統領令で対象となる中国企業への投資は控えられる可能性が高いが、これらの企業に致命傷を与える可能性は低く、取引の全面禁止による予期せぬ巻き添え被害が起こる可能性も低い」と指摘した。
来年1月20日に発足するバイデン政権が対中政策を修正する可能性もある。
Tuchband氏は「一部の投資家は、バイデン氏がトランプ政権の対中規制を撤回あるいは修正するか見極めようと待つ可能性がある」とした。
ホワイトハウスは大統領令の内容強化を計画しているかどうかの質問への回答を控えた。
大統領令の影響が小さいと考えられるもう一つの理由に、対象となる中国企業への米国ファンドの投資額が少ないことがある。米国に拠点がある数百ものファンドが対象企業の株式を継続保有しているものの、保有規模はどれも小さい。
ETFトレンズの調査責任者デーブ・ナディグ氏は、米国のファンドは対象の中国企業13社の株式あわせて約82億ドル相当を保有していると推定するが、投資規模でみると、こうした企業の投資家全体のごく一部に過ぎないという。