[香港 24日 ロイター] - 香港政府は24日、米ファイザーと独ビオンテックによる新型コロナウイルスワクチンについて、包装に問題があったとして一部の接種を中断した。
政府によると、ワクチンメーカーは安全性にリスクがあると考える理由はないとしており、中断は予防的な措置だという。
政府によると、香港とマカオでファイザー/ビオンテックのワクチンの販売を行う復星医薬産業(香港)から、特定のバッチ番号で瓶の封に関連した包装の問題が見つかったと報告があった。
政府は「ビオンテックと復星医薬は製品の安全性にリスクがあると考える理由は見つかっていないとしている」と説明した。
影響が生じるワクチン数量は現時点で明らかになっていないが、政府は当該バッチ番号ともう1つのバッチ番号について、追って通知するまで使用を中断する方針を示した。
復星医薬産業の親会社である上海復星医薬は24日、ビオンテックと共同で調査を進めていると発表した。
マカオ政府も24日、包装の問題でファイザー/ビオンテックのワクチン接種を中断すると表明した。
香港は2月に中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物技術)製ワクチンの接種を開始。ファイザー/ビオンテック製ワクチンは3月に接種を開始した。
<根強い不信感>
香港では、シノバック製ワクチンへの不信感や、副反応に対する懸念を背景に、ワクチン接種が進んでおらず、今回の問題を受けて、接種ペースがさらに鈍る可能性が高い。
政府統計によると、過去1週間でファイザー/ビオンテック製ワクチンの接種を予約した人は、シノバック製ワクチンを予約した人の2倍以上に達した。
これとは別に、香港政府は、ワクチン接種を担当していた民間の診療所の医師が「合意事項に違反した」として、この診療所を閉鎖したことを明らかにした。
公共放送局の香港電台(RTHK)によると、この医師はシノバック製よりもファイザー/ビオンテック製のワクチンのほうが国際的な評価が高いとして、後者の接種を市民に勧めたという。
この医師のコメントは取れていない。この医師の診療所では、シノバック製のワクチンしか扱っていなかった。ファイザー/ビオンテック製のワクチンは、規模の大きな公的施設でしか接種できない。
反政府デモが続いた香港では、中国本土に対する不信感が強まっている。
ワクチン接種後に複数の死者が出たとの報道も、一部の市民の不安を煽っている。政府はワクチン接種と死亡例の間に直接の関係はないと説明している。
接種率が低いため、多くの市民は様子見姿勢を取っている。香港の人口750万人のうち、接種を受けた人は約5%にとどまっている。
ある67歳の市民は、ファイザー/ビオンテック製ワクチンの接種を受けるとし、シノバック製のワクチンは「データが不明瞭だ」と述べた。
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、市民に対し、ワクチンを接種するよう繰り返し呼び掛けている。