*12:31JST エヌ・シー・エヌ Research Memo(1):大規模木造建築(非住宅)分野は順調に事業領域を拡大
■要約
エヌ・シー・エヌ (TYO:7057)は、木造建築の耐震性を確保するための高度な構造計算を事業化するとともに、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現するため、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート構造)において主流だったラーメン構法(骨組み(部材)の各接合箇所を剛接合したもの)を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムであるSE構法を、工務店を中心としたSE構法登録施工店ネットワークを通じて提供する。
さらに、木造住宅で培った構造計算などのノウハウを、幼稚園や老人介護施設、店舗やオフィスなど住宅以外の大規模木造建築へ転用し、事業規模の拡大を推進している。
1. 2024年3月期第1四半期の業績
2024年3月期第1四半期(4-6月)業績は、売上高1,966百万円(前年同期比7.7%減)、売上総利益585百万円(同10.0%増)、営業利益33百万円(同66.4%減)、経常利益5百万円(同92.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純損失9百万円(前年同期は49百万円の利益)となった。
国土交通省が発表した同期間における新設住宅着工戸数は前年と比べ約1万戸減少しており、特に持家は3ヶ月とも前年同月比で約11~12%の減少となった。
このような状況のなか、大規模木造建築(非住宅)分野における売上高は前年同期比3.2倍に成長したものの、住宅分野では大口取引先の受注高減少と販売単価の下落により売上高は同32.8%減となり、全体では減収となった。
利益面では、連結子会社4社の営業損失計上や、持分法適用関連会社(株)MUJI HOUSEの持分法による投資損失32百万円の計上により、大幅な減益となった。
2. 2024年3月期の業績予想
2024年3月期の業績予想は、売上高9,055百万円(前期比2.0%減)、売上総利益2,401百万円(同1.8%増)、営業利益233百万円(同44.7%減)、経常利益233百万円(同48.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益165百万円(同45.4%減)を見込んでいる。
大口取引先の受注高減少や販売単価の値下げにより住宅分野の売上高は前期比17.7%の減少を見込むが、大規模木造建築(非住宅)分野の売上高については、登録施工店の非住宅分野への取り組みの推進等、大規模木造建築のワンストップサービス提供を強化し、同62.2%増の成長を予想する。
また、環境・DX・その他分野では、住宅・非住宅を合わせて3,013戸(前期比20.6%増)の省エネ計算を行うとともに、非住宅向けZEB※認定サポート事業の開始等により、前期比7.8%増の売上高を見込む。
利益については、積極的な人材投資、Web、SNS等での広告宣伝費用の増額を計画しており、営業利益以下、各段階利益で大幅な減益を見込む。
※ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略。
建物で消費する年間の1次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した指標。
高効率な設備システムの導入により室内環境の質を維持したまま大幅な省エネルギーを実現し、さらに消費するエネルギーをすべて太陽光等再生エネルギーで賄うことを目指す。
ZEB化支援事業として認定されれば、環境省、経済産業省から補助金が交付される。
3. 中期計画と今後の成長戦略
同社は、2024年3月期の業績予想とともに、2026年3月期までの中期計画と今後の成長戦略を発表した。
2023年3月期に売上高100億円を目指した前回の中期計画は、売上高92.4億円と目標未達となったが、2023年3月期の売上高・営業利益・経常利益は過去最高となった。
2024年3月期は足元の住宅分野の厳しい環境から減収減益を見込むが、その後は増収増益とし、2026年3月期には売上高128億円、営業利益6.5億円を計画している。
「建築基準法 第20条4号特例」の改正(縮小)により、2025年4月から木造2階建て建築でも構造確認が義務化されるため、施行に向けた動きとして木造の構造計算の普及が加速していくことが予想される。
また、「省エネ基準適合義務化」においては、建物の省エネ性能についての説明の義務化にとどまっていたものが、2025年4月からすべての住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられ、省エネ計算が必須となる。
こうした背景の下、同社の省エネ計算、構造計算、耐震シミュレーションなどの成長環境が高まっている状況にある。
今後の成長戦略として、(1) 登録施工店数増加による住宅分野のシェア拡大や非住宅分野への販売展開、(2) 構造計算・省エネ計算や部材供給力に、子会社の(株)翠豊が持つ大規模木造建築の特殊加工や施工力を加えた同社独自の非住宅大規模木造建築に関するワンストップサービスの展開、(3) 2025年の建築基準法改正による構造計算、エネルギー計算の需要拡大への対応、(4) 非住宅向けのZEB認定サポートなど建築物の省エネルギー化支援の展開、などを挙げている。
中期計画では、今後3年間で、住宅分野は2023年3月期比7.9%増の7,747百万円へ、非住宅分野は同171.9%増の4,640百万円へ、環境・DX・その他分野は同19.4%増の421百万円へと成長を目指す。
■Key Points
・2024年3月期は住宅分野の環境が厳しく減収減益の予想
・大規模木造建築(非住宅)分野はワンストップサービスの提供体制が整い、順調に事業領域を拡大
・「建築基準法 第20条4号特例」の範囲縮小で成長加速へ
・中期計画では2026年3月期の売上高128億円、営業利益6.5億円を目指す
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
エヌ・シー・エヌ (TYO:7057)は、木造建築の耐震性を確保するための高度な構造計算を事業化するとともに、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現するため、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート構造)において主流だったラーメン構法(骨組み(部材)の各接合箇所を剛接合したもの)を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムであるSE構法を、工務店を中心としたSE構法登録施工店ネットワークを通じて提供する。
さらに、木造住宅で培った構造計算などのノウハウを、幼稚園や老人介護施設、店舗やオフィスなど住宅以外の大規模木造建築へ転用し、事業規模の拡大を推進している。
1. 2024年3月期第1四半期の業績
2024年3月期第1四半期(4-6月)業績は、売上高1,966百万円(前年同期比7.7%減)、売上総利益585百万円(同10.0%増)、営業利益33百万円(同66.4%減)、経常利益5百万円(同92.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純損失9百万円(前年同期は49百万円の利益)となった。
国土交通省が発表した同期間における新設住宅着工戸数は前年と比べ約1万戸減少しており、特に持家は3ヶ月とも前年同月比で約11~12%の減少となった。
このような状況のなか、大規模木造建築(非住宅)分野における売上高は前年同期比3.2倍に成長したものの、住宅分野では大口取引先の受注高減少と販売単価の下落により売上高は同32.8%減となり、全体では減収となった。
利益面では、連結子会社4社の営業損失計上や、持分法適用関連会社(株)MUJI HOUSEの持分法による投資損失32百万円の計上により、大幅な減益となった。
2. 2024年3月期の業績予想
2024年3月期の業績予想は、売上高9,055百万円(前期比2.0%減)、売上総利益2,401百万円(同1.8%増)、営業利益233百万円(同44.7%減)、経常利益233百万円(同48.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益165百万円(同45.4%減)を見込んでいる。
大口取引先の受注高減少や販売単価の値下げにより住宅分野の売上高は前期比17.7%の減少を見込むが、大規模木造建築(非住宅)分野の売上高については、登録施工店の非住宅分野への取り組みの推進等、大規模木造建築のワンストップサービス提供を強化し、同62.2%増の成長を予想する。
また、環境・DX・その他分野では、住宅・非住宅を合わせて3,013戸(前期比20.6%増)の省エネ計算を行うとともに、非住宅向けZEB※認定サポート事業の開始等により、前期比7.8%増の売上高を見込む。
利益については、積極的な人材投資、Web、SNS等での広告宣伝費用の増額を計画しており、営業利益以下、各段階利益で大幅な減益を見込む。
※ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略。
建物で消費する年間の1次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した指標。
高効率な設備システムの導入により室内環境の質を維持したまま大幅な省エネルギーを実現し、さらに消費するエネルギーをすべて太陽光等再生エネルギーで賄うことを目指す。
ZEB化支援事業として認定されれば、環境省、経済産業省から補助金が交付される。
3. 中期計画と今後の成長戦略
同社は、2024年3月期の業績予想とともに、2026年3月期までの中期計画と今後の成長戦略を発表した。
2023年3月期に売上高100億円を目指した前回の中期計画は、売上高92.4億円と目標未達となったが、2023年3月期の売上高・営業利益・経常利益は過去最高となった。
2024年3月期は足元の住宅分野の厳しい環境から減収減益を見込むが、その後は増収増益とし、2026年3月期には売上高128億円、営業利益6.5億円を計画している。
「建築基準法 第20条4号特例」の改正(縮小)により、2025年4月から木造2階建て建築でも構造確認が義務化されるため、施行に向けた動きとして木造の構造計算の普及が加速していくことが予想される。
また、「省エネ基準適合義務化」においては、建物の省エネ性能についての説明の義務化にとどまっていたものが、2025年4月からすべての住宅に省エネルギー基準への適合が義務付けられ、省エネ計算が必須となる。
こうした背景の下、同社の省エネ計算、構造計算、耐震シミュレーションなどの成長環境が高まっている状況にある。
今後の成長戦略として、(1) 登録施工店数増加による住宅分野のシェア拡大や非住宅分野への販売展開、(2) 構造計算・省エネ計算や部材供給力に、子会社の(株)翠豊が持つ大規模木造建築の特殊加工や施工力を加えた同社独自の非住宅大規模木造建築に関するワンストップサービスの展開、(3) 2025年の建築基準法改正による構造計算、エネルギー計算の需要拡大への対応、(4) 非住宅向けのZEB認定サポートなど建築物の省エネルギー化支援の展開、などを挙げている。
中期計画では、今後3年間で、住宅分野は2023年3月期比7.9%増の7,747百万円へ、非住宅分野は同171.9%増の4,640百万円へ、環境・DX・その他分野は同19.4%増の421百万円へと成長を目指す。
■Key Points
・2024年3月期は住宅分野の環境が厳しく減収減益の予想
・大規模木造建築(非住宅)分野はワンストップサービスの提供体制が整い、順調に事業領域を拡大
・「建築基準法 第20条4号特例」の範囲縮小で成長加速へ
・中期計画では2026年3月期の売上高128億円、営業利益6.5億円を目指す
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)