先週前半はドル安圧力が後退したものの、週後半は冴えない米指標データを背景にドル安が再燃した。ドル安再燃を考える上で注視すべき3つの要因がある。1点目は、筆者が警戒していた米株での「四半期調整パターン」が見られず、ナスダック総合指数が過去最高値を更新する等、むしろ上値トライとなっていること。2点目は、4月以降の冴えない指標データにより、イレギュラーな現象(=悪天候と湾岸ストライキ)を背景とした米景気回復の一時的な失速、という説に疑問符が付き始めていることだ(=米早期利上げ期待&金利低下要因)。これらを掛け合わせると、グローバル市場は「株高オンリーのリスク選好」状態となり、外為市場ではドル安圧力が強まりやすい相場環境となる。そして3点目は、EUR/USDとUSD/JPYが短期サポートラインの攻防に敗れたことだ(=テクニカル面でのドル安示唆)。
よって、今週はドル安再燃に注視する1週間となろう。
注目イベントは、28-29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と米重要指標データだろう。前者の注目点は、声明文で現状と将来の景気動向に対してどのような見解を示すか、そして利上げ時期とペースに関してシグナルを発信してくるかどうかだろう。後者は、1-3月期国内総生産(GDP)速報値に注目が集まろう。上述した通り、米景気回復は「悪天候と湾岸ストライキ」による一時的な現象との説を、4月以降の冴えない指標データが覆しつつある。また、米財務省が9日に発表した為替報告書では「世界経済が米国経済のけん引力だけに依存すべきではない」と、将来の米景気失速を懸念しているとも取れる表現を盛り込んできた。GDP速報値で、悪天候以外の要因、つまりドル高 / 原油安 / 新興国市場の低迷が米景気回復の疎外要因となっていることが判明すれば、「DATA Dependency-指標データ次第」スタンスを鮮明にしているイエレンFRBは躊躇することなく利上げ時期を年後半に先送りすると、マーケットは捉えよう。その際の米国マーケットの反応だが、米債券市場では金利の低空飛行が継続しよう。一方、堅調さを維持しているとはいえ、GDPが市場予想の1.0%割れとなれば素直に株安で反応しよう。「金利低下/株安」となれば、外為市場では当然のごとくドル安圧力がさらに強まろう。
円相場は海外株式の動向次第だろう。欧州株式は直近の良好な指標データや欧州中央銀行(ECB)による緩和強化を背景に株高維持となる公算が高い。リスク要因はギリシャ情勢だが、直近の独金利の反発基調も鑑みるに欧州投資家はユーロ圏経済の回復の方を意識していることがうかがえる。この状況(=株高+独金利反発)が継続するならば、「欧州株高→独金利反発→米独金利差縮小→ユーロ売り圧力後退」というプロセスを背景に、EUR/USDは節目の1.10台へ向け上昇トレンドが鮮明化する可能性があろう。ドルストレートでのドル安はクロス円の上昇要因となることから、EUR/JPYをはじめとしたクロス円の上昇がUSD/JPYをサポートする局面が散見されよう。
【テクニカル分析コメント】 - USD/JPY、一目/雲の下限でレジストされれば118円割れトライが視野に
レジスタンス
119.63:一目/基準線(赤ライン) 、4/24高値
119.59:21日MA(緑ライン)
119.00:NYオプションカット
118.94:一目/雲の下限
サポート
118.53:4/20安値
118.50:ビッド、下にストップ
118.21:リトレースメント61.80%
118.00:ビッド
週明けは、一目/雲の下限をローソク足の実体ベースで下方ブレイクする展開となっている。RSIが売り買い分水嶺の50.00を下回っている現状も鑑みるに、目先の焦点は、このまま雲の下限がサポートからレジスタンスへ転換するかどうかだろう。そのような状況となれば、118円ミドル下のストップを巻き込む展開を想定し、ドルショートで臨みたい。ショートポジション保有後、アンワインドの水準として想定すべきはリトレースメント61.80% の118.21、もしくはビッドが観測されている118.00だろう。
欧米株式が堅調に推移すれば118円維持を想定し、これらサポートポイントで途転(=ドルロング)で攻めるのも面白い。
日足チャート