今週の外為市場では、ドル高の継続が最大の焦点となろう。それを見極める上で重要な試金石となるのが、17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だろう。イエレンFRBが6月利上げスタンスを鮮明にすれば、所々で調整が入りながらもドル高トレンドは継続しよう。逆に6月利上げの可能性が後退すれば、短期的にドル安への逆回転リスクを警戒したい。
イエレンFRBのスタンスはタカ派かハト派か。この点を見極める上で重要なポイントは、好調な労働関連指標と低迷するインフレ指標をイエレンFRBがどのように捉えているかだろう。
1月のFOMC声明文では、労働市場の改善が短期的リスクとしての低インフレから脱却するきっかけになると指摘した。堅調な労働市場の改善を重視し、「辛抱強くなれる(be patient)」の文言を削除し、前回利上げ時(2004年当時)に用いられた「緩やかなペース(measured pace)」と同義語の文言を新たに盛り込んで来れば、グローバル市場は米6月利上げを意識しよう。タカ派スタンスが判明した場合の焦点は、米国株式の動向にあろう。現時点で、米早期利上げ観測はドル独歩高(ドルインデックスが節目の100.00を突破している状況)を誘発すると同時に、米株の不安定化を招いている。イエレンFRBのタカ派スタンスを受け、米株の下落が「トレンド化」すれば、外為市場ではリスク回避のドル高が「トレンド化」しよう。
この場合、対ユーロ、資源国通貨そして新興国通貨でドル高が鮮明となろう。ただし、対円ではドル安優勢の展開を想定したい。「株安+ドルストレートでのドル買い」が合わさり、クロス円(特にEUR/JPY)での円高傾向が鮮明となるからだ。また、リスク回避から商品市況も軟調な地合いとなることで、資源国通貨(AUD、CAD)や高金利通貨(NZD)も対円で下落トレンドが鮮明になると想定する。
逆にイエレンFRBが、ドル高による悪影響(輸出の減少・米企業業績の悪化)と原油安による低インフレ懸念を重要視するスタンスを示せば、マーケットは6月利上げの可能性が後退したと捉えよう。
この場合、米国マーケットは「株高・金利低下(債券価格の上昇)」の展開となろう。外為市場では、短期的にドル安への反転リスクを警戒するフェーズへとシフトしよう。特に約12年ぶりの安値水準まで急落しているEUR/USDの動向には要注意。この通貨ペアは一方向にトレンドが振れる性質がある。FOMCで6月利上げ観測が後退し、一転してユーロショートカバー&ドル売りとなれば、これまでの反動から短期的に急騰するリスクがあろう。EUR/USDがそのような展開となれば、米6月利上げ観測後退により商品市況の上昇がサポート要因になると想定される資源国通貨や資本流出懸念が後退する新興国通貨でもドルロングを解消する動きが加速しよう。
一方、円相場では株高を背景にクロス円が上昇し、ドル円でのドル売り圧力を相殺しよう。よって、ドル円の下値はクロス円の動向次第ということになろう。