今週はほとんどの日で上昇していたドルは、金曜日の強弱のある雇用統計発表後に勢いを失った。米ドルは商品通貨に対して利益を伸ばしたが、円、ユーロ、ポンドに対しては下落した。雇用統計は6ヶ月間で最低の非農業部門雇用数となり、予想を下回ったが、これはハリケーン・フローレンスによって29万9000人が働けなかったからだ。統計結果は、失業率が48年ぶりの低水準となり、前回の速報での8月の雇用数に6万9000人が追加修正され、それほど悪くはなかった。唯一の悪いニュースは、先月に引き続き9月も0.3%となった平均時給だ。8月の速報値は0.3%へと0.1%下方修正されたが、速報が1年で最も強い結果だったし、安定した成長率によるゆるやかな調整のため心配はない。今週発表された指標によるとサービス部門の活動は非常に強く、10月に雇用の伸びが回復するはずだ。これらすべての理由から、ドルは特に円に対しては押し目買いをすべきと引き続き信じる。米国経済の相対的な強さは、連邦準備制度理事会の金融政策が引き締めとなることをはっきりさせている。FRB議長は、インフレが加速することを懸念しており、来週の経済指標はその懸念を強めるだろう。2014年以来の最高値水準である原油価格につられて、 CPIと PPIが驚くような上昇をし、ドルの上昇が再開する可能性が十分にある。実際、投資家は来年度に2回の利上げの代わりに3回の可能性を検討し始めており、ドルが下落している間に10年債利回りは11年ぶりの最高値となっている。
一方、今週の経済指標によって今月後半の利上げの可能性が低下し、高値のカナダ国債利回りと原油価格によって USD / CADは1.2950を上回れずに取引された。 8月には貿易収支がプラスに転じたが、9月には製造業PMIが大幅に減速した。また、金曜日に 雇用者数が発表され、カナダは今年最も高い雇用数とより良い失業率となったが、投資家は労働市場が主にアルバイトによって支えられていると懸念している。平均時給の伸びが鈍化したことも個人消費の懸念を引き上げた。今後の見通しを見ると、投資家が米ドルに対する市場のニーズに左右されるため、来週の住宅市場の指標は、通貨に大きなインパクトはないだろう。 テクニカル的には、レジスタンスラインがあまりないためUSD / CADは1.3000まで上昇することが可能だ。
金曜日に最も下落した通貨はオーストラリアとニュージーランドドルだった。今週初めに述べたように、2つの通貨が今週上昇できなかった主な理由は景気の悪化だ。両方の通貨への売り圧力が強いため、さらに下落する可能性がある。予想以上の小売売上高、増大する 貿易黒字、拡大するサービス業指数というオーストラリアの指標は支えとならなかった。しかし、最近の住宅ローン金利の上昇は住宅市場に重大な影響を及ぼし始めており、投資家は(まったく改善していない)米中貿易戦争の前に景気が悪くなるのは時間の問題でしかないと懸念している。したがって、来週のNAB企業信頼感指数と消費者信頼感指数は豪ドル上昇の材料にはならないだろう。一方、低下を続ける乳製品価格や求人広告も下落し、ニュージーランドの景気は悪化している。来週のPMIは、この弱い状況を強くするものと予想されている。両国の市場が最も注目するデータは、輸出活動に影響の大きい中国貿易収支となるに違いない。
逆にポンドは最も強い通貨だった。投資家はブレグジット合意の希望をあきらめておらず、その楽観的な見方はEUのバルニエ主席交渉官のコメントにより強まった。コメントはEUがこれまでのどんな合意よりも包括的な自由貿易取引を英国に提供する用意があるというもの。残念なことにこれは、英国のメイ首相の摩擦のない貿易という要求の拒否を意味し、英国人はこの取引に満足できないかもしれない。先週の保守党大会で、英国は悪い合意をするくらいなら合意なしでEUを離れる意思があることをメイ首相が明らかにしたため、この提案では足りないと感じた場合、ブレグジット交渉は再び崩壊する可能性がある。バルニエ氏は水曜日に提案書を正式に発表する予定で、その後英国からの回答が得られるだろう。 アイルランドの国境は依然として解決されていない問題で、英国は来週に解決策を提示したいと考えており、EUがどのように対応するかに注目したい。