米国の今週22日木曜日はサンクスギビングデーを控えているが、月曜日の外国為替市場はホリデーシーズンのムードを打ち破るような相場であった。株式市場が下落し始めると、ユーロ、スイス フラン、日本 円に対してドル高推移となった。サンクスギビングのため、米国株式市場と債券市場は木曜日と金曜日午前が休場となるが、為替市場は引き続き取引される。米国のサンクスギビングの週には、為替市場おいて新しい記録や節目となった過去があるため注目されるだろう。下部のチャートを参照してみよう。
昨年度のサンクスギビングの前日において、USD/JPYが2ヶ月間の最安値を記録していた一方、EUR/USDとGBP/USDはサンクスギビング当日に1ヶ月間の最高値を記録した。2016年度においては、USD/JPYが7ヶ月間での最高値となった一方、EUR/USDは11ヶ月間の最安値となった。当時のポンド市場では特に動きはなかった。2015年においては、USD/JPYは安定していたものの、EUR/USDとGBP/USDはサンクスギビングの週に7ヶ月間の最安値をマークすることとなった。毎年、サンクスギビング前に上記のようなトレンドが見られる。今年もこのようなトレンドがあるとすると、今週のEUR/USDは1.15ドル、USD/JPYは112円をマークする可能性がある。
ファンダメンタルの要因となる米国経済指標は今週は特に控えておらず、準大手企業の決算がドル売り継続の懸念材料とされているようだ。月曜日に公表された米NAHB住宅市場指数はエコノミストの予想通り下落となり、ドル続落の十分な要因となった。ドル上昇のモメンタムがダウンサイドへと転じる結果となったため、FRB議長やFOMCメンバーウィリアム氏が「雇用者数の堅調な伸びとともに、米国経済は好調に推移している」と楽観的な見通しとは裏腹に、ドル高への影響は全くなかった。火曜日発表予定の住宅着工件数と住宅建築許可件数はドルのトレンドを変える要因とは考えにくい。
一方で、ユーロ圏の経常収支は予想を下回り、ユーロの上昇を止めることはできなかった。 金曜日終わりのEUR/USDは9月以来に20日平均線を上回っただけでなく、2ヶ月ぶりとなる、200日移動平均線を上回る水準で4時間取引されていた。これによって、抵抗ラインの1.1510ドルまで上昇する可能性がある。ユーロとカナダはそれぞれ、金曜日に重要な経済指標の発表を控える。直近の経済指標の数値より、ユーロ経済の減速懸念が広がっているが、今回のPMI(購買担当者指数)で確認することができるだろう。しかし発表前に1.1500ドルとなる可能性がある。
英ポンドは奮闘しており、2日連続で上昇している。焦点はイギリスのEU離脱(ブレグジット)である。メイ英首相はいまだ英議会からの承認獲得に取り組んでいる一方、保守党議員は首相不信任案投票の書簡獲得に焦点を当てている。メイ英首相は今週にも集中的に話し合いが行われるとされているが、重要な合意につながる可能性は少ないだろう。一方で、保守党は不信任投票実施に必要な48通の書簡のうち、25通を獲得している。タイムズ紙によると、保守党離脱推進派は不信任案投票実行への書簡が今週にも必要数に達する確信があるという。そのような事態が起これば、GBP/USD相場は1.27ドルへと反落することが予想される。
ユーロ圏通貨とは別に、主要3商品通貨はドルに対して安値で取引されることとなった。週末に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議においては、米中間の対立によって、首脳宣言で合意できないままの閉幕となった。豪ドルとNZドルはこの影響を受けたと考えられる。カナダのトルドー首相によると、貿易問題を理由に宣言が採択されなかったことは、25年間の歴史において初めてであるという。今回の件を考慮すると、次回のG20において習近平国家主席がセッティングしたトランプ米大統領との会合は、残念ながら上手くいくことはないだろう。USD/CADはドル安へと転じ、原油価格は引き続き下落となった。