低リスクで安全性の高い株式は長年好まれなかった。株式市場は歴代最長の景気拡大局面であったため、投資家は成長を続ける株式市場へ多額の資金を投じた。
しかし、急上昇を続けていた多くのハイテク株は反落したため、安定配当株への注目が集まっている。安定配当株は過度なボラティリティや景気低迷へのヘッジ資産である。
こういったディフェンシブ銘柄の中で、我々は特に電力、ガス株を推奨する。両社のビジネスは手堅く、厳しい規制の下で収益を生み出しているからである。両社は単に配当を行っているのではなく、数十年にわたって増配を行ってきた。
マーケット環境の変化に伴い、2019年に入ると投資家は成長株以上に安定配当株へとシフトするとみられる。以下に電力・ガス株の上位2社についてピックアップしてみた。
デューク・エナジー (Duke Energy)の増配計画
年間配当利回り4.27%、1株当たり配当額3.71ドルを考えると、デューク・エナジー(Duke Energy) (NYSE:DUK)株は魅力的と思われる。同社は米国の主要マーケットの一部を担う、多岐にわたる電力、ガスサービスを展開している。
様々な電力、ガス、蓄電事業を通じて、同社は年間配当成長率を4~6%にする計画を立てている。近年、同社が事業ポートフォリオを大幅に見直している中で、同株は長期保有投資家にとって恩恵を与えてくれる存在となるだろう。
同社は炭素系発電施設と海外事業の売却、天然ガス施設の取得、再生可能エネルギーの拡大への再編を行っている。現在の事業は、規制対象資産および中規模パイプラインと再生可能エネルギーで構成された長期契約ビジネスが主な収益源となっている。
同社は2018~2022年にかけて370億ドルにも及ぶ開発計画を打ち出している。インフレ率を超える配当成長を達成するため、主に規制対象資産を中心にこの規模での設備投資が決定されたとみられる。
主要指数に対してアウトパフォームしていた直近3ヶ月間の上昇率は約9%だった。これは株式市場が低迷期を迎えるに伴い、低リスク資産への資本移転が起こっていることを意味する。同株価が上昇した後も、4%を超える配当利回りは長期保有としては魅力的となっている。
直近の割安感から長期投資として魅力的なエンブリッジ株
カナダのカルガリーに本社を構える、エンブリッジ(Enbridge) (NYSE:ENB)もまた、6.28%の年間配当利回り、1株当たり2.03ドルの配当額から魅力的な株式であると考えられる。
同社は北米最大のパイプライン事業を展開しており、北米で生産されている原油の輸送網の28%をカバーする。また米国で消費される天然ガスの輸送網の約22%もカバーしており、主要供給施設やニーズのある市場において事業展開している。
同地域におけるエネルギーインフラの重要な役割を担うため、エンブリッジ株への投資は長期的には比較的安全であると考えられる。規制環境の中でも収益をあげられる能力を有するため、景気後退時や市場低迷期においてでも、安定的に配当収入を得られる株式だと考えられる。
さらに、過去20年間で配当額は11.7%の年平均成長率で推移している。
同社は220億ドル規模の開発プロジェクトを引き受けたため、2020年までに年間配当を10%増加させる見通しを立てている。
大規模リストラ計画やノンコア資産の売却、債務負担の軽減を行う計画だが、株価は年初より約18%下げている。
だが、これらの計画が無事に完了した場合は今後1年間で大きなアップサイドが見込めるだろう。
長期投資家にとっては、エンブリッジ株は割安感ゆえに絶好の買い入れ時だと言える。
要点
デューク・エナジー、エンブリッジといった電力・ガス株への投資は、低成長株であり債券程度のリターンしか見込めないため、魅力的に感じられないかもしれない。しかし、着実な配当成長によるリターンを狙う長期保有投資家にとっては最適な株式だと考えている。