連邦準備制度理事会(FRB)の新副議長のリチャード・クラリダ(Richard Clarida)氏に注目が集まっている。先週に、FRBが 利上げのペースを再考していることを漏らしたのは彼だった。これはジェローム・パウエルFRB議長の発言によって明確になる一日前の出来事だった。
FRBは経済指標を基に柔軟に政策金利を決定する方針を示しているが、投資家たちがすでに気づいていたように、12月に利上げ後、来年に3回~4回の利上げを行わない可能性が高い。
クラリダFRB副議長の火曜日の講演によると、FOMCメンバーは自然失業率と中立金利の予想を下方修正しているという。元コロンビア大学の経済学の教授とPIMCOのアドバイザーが言うには、FOMCメンバーは各会議で最新のデータを見なければならない。経済指標という事実を前にしては、FOMCメンバーは経済がどのように進むか、どのようなペースで政策金利を適応させる必要があるかという各自の考えは、放棄しなければならないという。
その後、水曜日のパウエルFRB議長はNY経済クラブの大々的な講演で、「中立金利」をわずかに下回る水準だという認識を示した。同氏は10月には、中立金利には程遠いと発言していた。パウエルFRB議長は12月の利上げを考慮していたと考えられるが、クラリダFRB副議長が言うように、想定される中立金利は下方修正されていることは明らかだった。
パウエルFRB議長は、利上げに対して「プリセット(予め設定されたこと)」などないことを述べた。11月初旬のFOMC議事録でもあったように、このプリセットという言い回しはFOMCメンバーの間で使われていた。
「彼らはFRBの利上げの予想は、現在の経済見通しに基づいている」や「政策金利はプリセット(設定)された道のりなどない」と議事録で示されてあった。経済指標に基づいて、柔軟にコンセンサスを変えていく必要性が議論されていた。
クラリダFRB副議長に注目する理由は、FRBの中でも彼は指折りの経済学者であるからだ。一方、パウエルFRB議長の発言はFRBの総意となりえるが、政策金利を決定する経済的な動きを理解する、メンバー内でのリーダー性を持ち合わせていない。
クラリダFRB議長は、個人消費支出(PCE)から測られるインフレがFRBの2%の水準に達してないのかを、労働参加率はいまだリーマンショック以前の水準より低いことを用いて説明していた。要するに、たとえ失業率がさらに低くなろうとも、フィリップス曲線通り賃金が押し上げられる危機は少ないということだ。
ハト派にトーンダウンしたのは、トランプ米大統領による圧力か、単純に利上げによる経済への影響を考慮したのかは関係ない。ウォールストリート・ジャーナルの編集委員会の一部の人は、トランプ米大統領のツイートはなんの役割を担ってはいないし、FRBは単純にニューヨーク株式市場の動向に基づいていると述べた。一方で、アナリストのリチャード・X・ボーブ氏のように、大統領による圧力は常にあるものだと述べる者もいる。ともあれ、FRBはこれから利上げペースを減速すると見られる。
来年すべてのFOMCは、その後毎回記者会見があり、政策金利について詳細に説明されることになる。しかし、政策金利自体が大きく変更されると言う訳ではない。FF金利先物は12月の利上げの後で、50%以上の確率で6月か7月に利上げされる可能性を示している。