アルゼンチンで行われたトランプ米大統領と習近平国家主席の会談によって90日間の貿易戦争の休戦が合意に至った。これにより、3月1日までに新たな追加関税が発動する脅威はなくなることだろう。
投資家は最悪のシナリオを想像していたため、今回の結果を受けて為替市場、株式市場はともに上昇した。しかしニューヨーク取引時間の株式、米ドル、高ベータ通貨は取引開始時の上げ相場から一転、続伸にはならなかった。
これは投資家が「米中間の休戦合意」に懸念感を抱いているということだ。90日間の休戦は1月1日から開始され、この90日間で停戦、もしくは25%の追加関税発動が決まることとなる。休戦合意では、米国の貿易赤字解消に向けた、中国による米国製品の即時輸入が盛り込まれている。ラリー・クドロー米国家経済会議委員長によると、両国は1兆ドル超の貿易不均衡の解消を行うという。また同氏は、中国は直ちに輸入米国車への関税を撤廃するだろうと予想している。
だが、これらの米国側の要求を習近平国家主席が正式に認めているわけではない。ポジティブな面としては、2ヶ月間に渡って交渉が進むことになり両国の融和ムードが流れることだ。これはリスク資産、株式、為替市場にとってチャンスとなる。しかし、休戦期間の終了に近づくにつれて両国の融和ムードは薄れていく可能性がある。特に、両国の合意案に亀裂が走った場合である。今回の休戦合意が貿易協定へと繋がる可能性はないと確信する人が多いだろうが、USD/JPY、EUR/USD、NZD/USD、その他の高ベータ通貨ペアといった、リスクに敏感な通貨ペアは当面不安定にはならないだろう。
今回の休戦によって、豪ドルは高値での取引となったが、他の主要通貨と同様にロンドン市場の取引開始時にピークを迎え、下落に転じた。しかしこの下落は、FRBの金融政策発表を目の前にしたことや、特に日曜日の夜に発表された豪経済指標の弱含みによる、投資家のリスク回避姿勢の影響であったと考えられる。
PMI(購買担当者景気指数)による製造業景況感指数の著しい下落、インフレ圧力の緩和、求人広告の減少、企業の収益性の低下や住宅許可件数の減少などがみられた。こういった経済指標の弱さから、オーストラリア準備銀行(RBA)は金利を中立に維持する可能性が高い。貿易戦争による影響が数値として表れ始めたことで、これまでのRBAの楽観的な姿勢は今後変わってくると思われる。
原油価格が4.4%回復したことを受け、NZドルとカナダドルも高値の取引となった。月曜日の最大の出来事としては、カタールのOPEC脱退報道であった。
OPEC加盟国の原油産出量における、カタールが占める割合はごくわずかであるが、カタールの脱退によってOPEC全体の結束に懸念が広がっている。6ヶ月間で原油価格が20%下落したことを受け、OPEC加盟国と非加盟国は協調減産に関する会合を行う予定だが、会合前に脱退を表明する形となった。USD/CADは日中最安値での取引終了となったが、カナダ銀行が政策金利を決定するまで、今後も続落すると考えられる。
もう一つ重要なイベントとして、米国経済指標の発表スケジュールの変更が挙げられる。ジョージ・H.W・ブッシュ元米大統領の追悼式が水曜日に行われるため、水曜日発表予定のADP雇用統計とISM非製造業景況指数は木曜日に延期された。米国株式、債券市場は休場となるが、ベージュブックは東部標準時間の水曜日14時(日本時間木曜午前4時)に発表予定である。
パウエルFRB議長も国会での議会証言中止を決定した。議会証言は再度日程調整されることとなるが、新しい日程はまだ決まっていない。パウエル議長が先週発表した政策金利に関するコメントを明確にするのかどうか、投資家の注目が集まっているため、この議会証言は非常に重要なイベントとなっている。
イタリア政府の赤字目標引き下げに関する報道を受け、ユーロは米ドルに対して高値で取引終了となった。一方、英製造業購買担当者景気指数は予想を上回ったものの、英 ポンドは下落となった。今回のポンド下落に関して、弊社のボリス・シュロスベルク氏は次のように述べている。
12月11日にブレグジット(英国のEU離脱)合意案が英議会で否決された場合、メイ政権への内閣不信任案が突きつけられる恐れがあるとの報道があったため、経済指標の好調さがポンド高へと繋がらなかった。